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2017年6月14日 (水)

Standards

エラ・フィッツジェラルドの歌う「These foolish things 」を最初に聴いたのは、もう四十年くらい前のこと。FMのジャズ番組から録音したテープを、飽きるくらい聴いた。

今思えば、「Ella And Lous Again」というアルバムに入っているものだった。エラとルイ・アームストロングの共演アルバムなのだが、この曲はルイ・アームストロング抜きのセット(ピアノ:オスカー・ピーターソン、ギター:ハーブ・エリス、ベース:レイ・ブラウン、ドラムス:ルイ・ベルソン)をバックにした三曲のうちの一つ。1957年7月23日録音なので、ちょうど60年前だ。

ハーブ・エリスのギターがポロポロと鳴って、エラがゆったりと歌う。実にゆったりしていていい心地になる。以来、ジャズ・ヴォーカルで誰か一人を選べと言われたら、ビリー・ホリデイとどちらにするかちょっとだけ迷うけれど、エラ・フィッツジェラルドにするだろうなと思ってしまう。ビリー・ホリデイも大好きなのだが、雛の刷り込みと一緒で、最初に耳にしたものが最後には残る。

このエラ・フィッツジェラルドの歌をこのところ毎日通勤する車の中で聴いている。去年アマゾンで購入した「Ella Fitzgerald Collection」という130曲のmp3音源をCD2枚に焼き込み、どっぷりとハマっている。mp3とはいえ、130曲で900円というのは安い。1曲あたり7円弱だ。なんとも信じがたい世の中になったものだ。

残念ながら、この130曲の中に「These foolish things」は入っていない。だが、次から次へと出てくるのは、ジャズのスタンダード・ナンバーばかり。「April in Paris」「Love for sale」「My funny valentine」「Stella by starlight」「How deep is the ocean」などなど。

そうか、ジャズのスタンダード・ナンバーってほとんどが「歌もの」なんだ。しかも、その多くがラブ・ソング。ヴォーカル・ナンバーなのにその元歌の多くを聴いていなかったことに改めて気付かされた。いい曲だなあと思っていた曲は、歌詞もよい。ヴォーカリストなら言葉にして歌うところをサックスやピアノで「歌って」いたから、しみじみとした情感があふれていたのだなあとのみ込める。

「ラブ・ソング」がスタンダードになるのは、恋愛というものが、人間の感情の一番基本的なところ(喜怒哀楽のいずれも)を揺り動かすからなのだろう。古今東西、老若男女にかかわらず、これほど普遍的な感情はないのではないか。「古今集」にしたって、その多くが「ラブ・ソング」だ。小野小町の

思いつつ寝ればやひとの見えつらむ夢と知りせばさめざらましを

などという歌を目にすると、ジャズのスタンダード・ナンバーにこういう歌詞があったのではと錯覚する。

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