« 花の盛りを遠く眺めて | トップページ | 定期試験の季節 »

2017年4月28日 (金)

花の盛りを遠く眺めて・その2

フランスの大統領選挙でもNational Front(国民戦線)のマリーヌ・ルペン候補が決選投票に残り、5月の投票結果が注目されている。おそらくマクロン候補が大統領になるだろう。トランプ対ヒラリーの場合と違い、大きく差が開いているので逆転はないというのが大方の予想のようだ。たぶんそうなのだろう。

ここでも「右傾化」とポピュリズム(大衆主義)の組み合わせかと図式化してしまうと、もっと底流にある大きな動きを見落としてしまうのではないだろうか。従来のような「右翼」「左翼」という二分法では本質からそれた把握になりかねない。

対立の構図は、グローバリズム対国家主権主義(単純にナショナリズムといってもよいかもしれないが)なのであり、左右の対立なのではない。国境も国家主権もなくしていこうとするEUを信奉するグローバリズムと、EUの統合によって高まった流動性のあおりを受けて沈んでいく農家や労働者階級の反グローバリズムが衝突している。

これがスティーブ・バノンの言う「a global tea party movement」ということなのだろう。市場が統合され、通貨が統合され、「人・モノ・金」が国境を越えて自由に移動できるようになれば、もっと豊かになると言われていたのに、実際はその逆になった。ブリュッセルのEU官僚たちは選挙で選ばれたわけでもないのに自分達の暮らしを支配している。そういう大衆の不満が国家主権の回復を求め始めているということなのではないか。イギリスのEU離脱にしても同根である。

つまり、ヨーロッパでもアメリカでも、自由貿易とグローバル化の進展により豊かになると言われていたことが「ウソ」だったと感じている人びとが存在しているということなのだろう。グローバル化が進展すると、グローバル企業は安い労働力を求めて途上国へ生産拠点を移動する。移動した先の経済が発展し賃金水準が上がってくると、また安い労働力の得られる場所を目指して移動する。そこから二つの対照的な結果がもたらされるという。一つは、先進国の中産労働者階級の没落と失業率の増加であり、もう一つは途上国の貧困率の低下である。世界規模で再分配を行なっているような感じもするが、グローバル化には明暗が伴うということか。

しかし、グローバル化が止められない流れで資本主義社会の必然だとしても、グローバリストにアゴで使われるのは嫌だ。そう思う人びとが存在しても不思議ではない。グローバリズムは国家主権を超えて世界のどこでも同じように商売ができるよう、あらゆる規制を撤廃させていく。国内法を超越してグローバル企業に利益がもたらされる仕組みを精細に作り上げる。巨大な富を得るのは一部の人間であり、その他の人びとはそれに奉仕する存在でしかない。バノンはそういった人びとの反発を

… a center-right populist movement of really the middle class, the working men and women in the world who are just tired of being dictated to by what we call the party of Davos.

と表した。「the party of Davos」(ダボス会議の連中)の進めるグローバリズムによって、まじめに働いている中産階級の労働者は惨めな暮らしを強いられているじゃないか。エリートの官僚やウォールストリートの銀行屋たちが言っていることは「おためごかし」の嘘っぱちだ。額に汗して働いている人間が没落しているのに、ギャンブルまがいの金融ゲームに興じている連中は、しくじって大きな穴をあけても税金で埋め合わせてもらい自分の懷を痛めていない。こんなことでいいわけがないだろう。そういう声がトランプ政権の誕生につながった。

確かにポピュリズム(大衆主義)なのだが、そしてまた、それは「右翼」的なものと親和性が高いのでもあろうが、左右のイデオロギーによってではなく人びとの「感情」を揺り動かす要素がそこにはある。自国民の福利を優先的に考える自国第一主義のどこが悪いのだ。保護主義でいいではないか。貿易自由化が絶対的な善であると誰が決めたのか。他国の国民を潤すことより、まずは自国の国民が暮らしの心配をしなくて済むようにしてくれ。こういった大衆の「感情」は、エリートがもっとらしく述べる高邁な理想主義や理路整然とした経済理論より説得力がある。

問題は、そのように国家主権を守ろうとするナショナリズムは分が悪い、ということではないか。

|

« 花の盛りを遠く眺めて | トップページ | 定期試験の季節 »

ひとりごと」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/486406/70400111

この記事へのトラックバック一覧です: 花の盛りを遠く眺めて・その2:

« 花の盛りを遠く眺めて | トップページ | 定期試験の季節 »