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2016年10月17日 (月)

もの思う秋・その4

分断統治は奴隷社会や植民地支配の基本的原則なのかもしれない。支配者である主人や宗主国に鉾先が向かないように、同じ境遇にある奴隷同士、植民地人同士でいがみ合い対立しあうように仕向ける。ある場合には、対立する一方に肩入れをして対立を煽る。和解や合意が成立しそうになると、巧妙な手口でそれを壊しにかかる。こうして支配者の地位は安泰となる。

ときどきのガス抜きは忘れずに行う。筋書きが決まっていて、どう転んでも予定調和からはみ出ない範囲での反乱。祭り騒ぎが終われば、また元どおりの被支配社会。管理できないような「革命」は、決して起こらない。「革命」ですらしっかりと制御されている。その後に待ち受けているのは、変質していく革命と引きずり降ろされる革命指導者と、以前よりもひどい混乱である。その混乱に乗じて公的部門が解体され民間部門へと移転された国富がどこかへ流出していく。

あまりにも救いのない認識だろうか。あるいは、「陰謀論だ」というお決まりのレッテル貼りで済ませてしまうだろうか。しかし、どこを見渡してもそういう支配・被支配関係が出来上がっているのではないか。それがはっきりと誰の目にも見える形ではなく、巧妙に覆い隠されているためその実感がないだけだ。メディアの果たしている役割は大きい。企業メディアは、「企業」メディアである以上「ひも付き」であろうと考えないわけにはいかない。つまり、企業メディアを所有している支配層の道具としての働きをしているだろうということは、少し考えてみれば分かることだ。報道の中立性や公平性などというものは、単なるお題目であり欺瞞でしかない。どの角度から、どの視点から事実を切り取るのか。どういう位置から、どういう意図で出来事を報じるのか。それらを考えてみただけでも中立・公平な報道など現実にはありえず、多かれ少なかれ「偏向」せざるをない性質というものが浮かんでくる。そしてまた、それで当たり前でもあるのだ。

NHKだから、三大新聞だから、広告を取っていないから中立・公平だなどということは、ありえないお伽話にすぎない。メディアの報道に接しているわれわれが、勝手に中立・公平だろうと思い込んでいるだけのこと。いつでも、鵜呑みにしない・疑いを持って批判的に見る・他のものと比較する。そういった姿勢が大事になってくるのだと思う。自分の目と頭を使って判断をしていくということなのだが、これがなかなか大変だ。だからラクなほうを選んでしまう。そうすると根こそぎからめ取られてしまう。せめて、鵜呑みにしないことだけでも、判断保留をとるだけでもささやかな抵抗はできる。

奴隷社会や植民地支配において分断統治が有効なのは、そこに「嫉妬」という要素が大きな役割を果たすからだ。ある国語辞書で「嫉妬」という語に画期的な定義を与えていた。「自分と同等だと思っていた存在が、自分より上であると気がついたときに、むらむらとわき起こる否定的な感情」これは秀逸な定義である。たとえば収入について。ビル・ゲイツやジョージ・ソロスみたいな大富豪に嫉妬を抱く人はいない。あまりにもかけ離れていて想像すらつかない。しかし、同級生の年収が自分より上であると気がついたときに、なんとなく落ち着かない気分になる人は多いだろう。あからさまな嫉妬を抱く場合もあるだろう。なんでアイツがおれより収入が上なんだよ、おかしいだろ、ということである。あるいはスポーツでもよい。大谷翔平に嫉妬する人間はいなくても、同じ草野球チームの先発投手に嫉妬する控え投手は山のようにいるのではないか。

つまり、かけ離れた存在に対しては嫉妬という感情を持ち得ないのに、同じような境遇にいる人間に対しては容易に嫉妬しうるということである。だから、低所得で苦しんでいる人間が、生活保護を受給している人間を嫉妬するというような、おかしな話になってしまう。そこに必要なのは、低所得に苦しんだり生活保護を受給しなければ生活が成立たないような社会構造に対する怒りの共有であるはずなのだが、「なんでアイツらだけ、いい思いしてるんだ」という感情の噴き上がりばかりが表面に出てくる。同じような状態に置かれている他の誰かを叩くことで溜飲を下げ、問題を生み出している根源に怒りが向かない。

「漁夫の利」というのは、何も故事成語の話だけではないということか。

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