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2016年7月19日 (火)

地に足のついた

小林薫が小さな一膳飯屋(というか食堂兼呑み屋)のオヤジを演ずる『深夜食堂』を観た。「ナポリタン」「とろろごはん」「カレーライス」という三話が連続したオムニバス形式だが、ゆるやかにつながっていく展開でおもしろかった。

深夜から早朝まであけるカウンターだけの古びた小さな店だが、しっかりと常連客がついている。そういえば、日経BPオンラインの柳瀬さんがTBSラジオの「文科系トークラジオ・ライフ」に出たとき、今またスナックが来てるんですよという話をしていた。和民やマクドナルドといった広告に支えられたビジネスが不振になる一方で、昔ながらのスナックが元気だと柳瀬さんは言っていたが、この『深夜食堂』を観ていてなんとなく納得した。

常連客はどこにでもいそうな人びとだ。サラリーマンやOLがいるかと思えば、ストリップ嬢やオカマのおじさん、地回りの与太者、旦那に急に死なれてしまったお妾さんなどなど。裏路地の小さな店ののれんをくぐれば、顔を合わせそうな連中ばかりだ。みんながそれぞれの生活を抱えている。そして、小林薫演じるオヤジの作る美味しいご飯を食べに、酒の肴を楽しみにこの店に集まってくる。

とりたててドラマチックな展開があるわけではない。一つひとつのエピソードは、その辺にいくらでもありそうな話だ。しかし、そのどこにでもありそうな小さな話を丁寧に作品化されると、この『深夜食堂』で出される一品料理みたいに、格別の味わいをもつものに仕上がる。こういう映画を観ると、ちゃんと生きなきゃなと思う。地に足のついた生活を送っていかないといけないよなとつくづく思う。ちゃんと真っ当に生きて、ふとすれ違った人びととつながりを持って、毎日ちゃんと食べていくことって、当たり前だけど一番大事なことなんだと思う。

この映画ではひと言も触れられていなかったが、オヤジの小林薫の顔には、左側を縦に切られた刃物傷があった。いろいろあったんだろうなと、この小さな店のオヤジの過去をあれこれと想像させる風貌になっていた。それから派出所のお巡りさんを演じていたオダギリジョーがよかった。この人はこういう演技もできるんだ、と感心してしまった。

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