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2016年5月27日 (金)

菅野完『日本会議の研究』読了

先日の記事(こちら )で触れた『日本会議の研究』(扶桑社新書)を読み終わった。「ハーバー・ビジネス」のサイトに連載された記事をまとめたものなので、最終章以外は既読内容だったが、あらためて考えこまされる。

今年の夏の参院選は衆議院総選挙と同時選挙の可能性が高いようだが、これが有権者にとって最後の選択機会になるのではないかと、いやな感じがする。安倍政権が参院でも三分の二以上の議会勢力を抑えてしまうと、憲法改正が実現する。この改憲に向けて、安倍政権の周辺にいる一群のひとびとは、長い時間をかけて地道に積み上げてきた。いよいよ最後の仕上げにかかるというところだろう。

暗澹たる気持ちになるのは、ここ数年の国政選挙の投票率が低いままであり、政治に無関心な人びとが多いということだ。よくわからないから、とりあえず丸投げ。白紙委任。そういうことなのかもしれない。憲法改正についても、賛成・反対が決められない、よくわからないという人は、とりあえず反対すべきである。それは議論のための時間を確保するためだ。丸投げや白紙委任してしまうと、賛成派が多数を占め、あっという間に改憲が実現するだろう。秘密保護法や安保法制の成立過程を振り返ってみれば、どういうことになるかすぐに予想がつく。

彼らは本気なのであり、地道に実績を積み重ねてここまでやってきたのだ。もうあと一歩で「詰み」となる。おそらく緊急事態法の新設が最初の改憲項目となる。昨年秋の同時多発テロ事件をきっかけにフランスは非常事態宣言を出し、五月末まで再延長されたというニュースが流れたが、それどころの話ではなくなる。

想像しにくいことかもしれないが、本気で戦前の社会と戦前の憲法への復帰を画策している人びとが実際に活動しているということだ。昭和初期だって満州事変が起きるまで、社会の空気は大正デモクラシーの延長で自由主義的、国際協調的なものだった。それが一気に総力戦に向けた動員体制へと変化していく。同時に軍部の発言力も増大していく。「空気」で動く日本の社会は、あっという間に「空気」の入れ替えが起こる。

安倍政権を支えている一群の人びとが何を考えているのか、このまま進むとどういう社会が待っているか、とにかくこの一冊を読んで考えてみることをお勧めする。この本は、地道に調べ上げた裏づけの上にまとめられているので、たんなる陰謀論だとレッテルを貼って片付けようとするのは、その評者の立ち位置をかえって露呈させることになるだろう。調査報道をやっている人間が少ない日本でもこういう一冊が出てくるようになったのは、興味深いことだと思う。

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