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2015年4月17日 (金)

中野京子『怖い絵』『怖い絵2』『怖い絵3』

このシリーズに興味を持ちながら、長い間手に取らないままになっていた。タイトル通り、カバーの絵画そのものが相当に怖い。しかし、内容を読み進めていくと、きわもの的な怪談話やオカルト話ではなく、きちんと作られた絵画鑑賞なのだと分かる。それもきわめて良質な。

図像学的解釈を挟みながら、聖書、ギリシア・ローマ神話に基づく題材を丁寧に解説されると、なるほど、それでここにこんなものが描きこんであるわけだ、とかこの色はそういう意味だったのかとひとつひとつ目を啓かれる。まさに啓蒙的な書物だ。

しかし、啓蒙書にありがちな堅苦しさはない。むしろ一枚の絵画に関連付けて展開される、ヨーロッパの歴史や文学の的確な解説が小気味良い。特にスペイン、フランス、オランダ、イギリスの王室とハプスブルグ家についての解説は興味深かった。断頭台にかけられる少し前のマリー・アントワネットを素描した絵を取り上げ、そこに込められた画家の悪意を取り上げたかと思えば、病的な印象のスペイン国王の絵から王室の近親婚の歴史をたどるなど、絵の鑑賞とともに、ヨーロッパの歴史、特に市民革命以前のヨーロッパの様子が実に丁寧に解説される。一冊で何冊分もの知識を教えてもらい、妙に得をした気分になった。

このシリーズ、ようやく文庫化もされたみたいで、広く読まれることを期待する。

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