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2013年11月 7日 (木)

福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

福岡さんの本を読みたいと思いながら、一冊も手にすることなく過ぎてきた。ようやく読んだのがこの一冊。講談社現代新書から2007年に出されたものだ。

表紙カバーの折り返しに著者福岡伸一さんの略歴が、写真とともに載っている。うかつなことに、同年代であることに初めて気付いた。分子生物学者という肩書きのイメージが生み出した先入観かもしれないが、自分よりも年長の人だろうと勝手に思っていた。どうも、科学者というと『鉄腕アトム』のお茶の水博士がまっさきに浮かんでくるので、そういう思い込みができあがったのかもしれない。

それはさておき、楽しい一冊だった。一般向けに書かれた新書なので、専門的な内容であるにもかかわらず、とても読みやすい。博士課程を終えたばかりの福岡さんが、研究生活を始めたニューヨークのロックフェラー大学に、野口英世の胸像があるという冒頭のエピソードから話は遺伝子の本体であるDNAの構造へと展開していく。

DNAの構造といえば、ワトソンとクリックというノーベル賞を受賞した二人がすぐに思い浮かぶが、この本を読むと、この二人が二重らせん構造を「発見」するまでに多くの先行する研究者がいたのだと知らされる。彼らほど知られていなくても、きわめて重要な研究成果を残していたのだという福岡さんの筆致には、同じ研究者としての敬意が感じられる。

そこから話がどんどん深いものになっていく。タイトルの生物と無生物を分けるものは何か。福岡さんが言う「動的平衡」とは何か。ここからの展開はきわめてスリリングである。「絶え間なく壊される秩序」が「動的平衡」だと福岡さんは述べる。生物の特徴は、絶えず入れ替わる立体ジグソーパズルのように、タンパク質が常に分解と合成を繰り返して更新されていく「流れ」なのだという。

専門的な話であるにもかかわらず、とても読みやすい、と書いたが、ジグソーパズルの比喩も含めてその文章が明晰であるのは、だれもが同意するだろう。それだけでなく、福岡さんの文章には詩的な美しさがある。それは、厳密な科学的事実をデータと理論の積み重ねだけで述べるのではなく、一般に向けて理解しやすい形にするときに出てくる著者の「地」の部分とでも言ったらいいのか、もともと福岡さんが持っていた資質の中にある部分なのかもしれない。

この一冊を皮切りに、しばらく福岡さんの本を読んでみようかと思っている。

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