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2013年9月22日 (日)

平松洋子『野蛮な読書』

本に引き寄せられる。確かにそういうことがある。水沢区の図書館で、お目当ての本が貸し出されていて、さてどうしたものかと思案した。このまま何も借りずに帰ってもいいのだが、そう思いながら、あまり足を向けたことのないコーナーの前を通り過ぎようとしたとき、ふと一冊の本の題が目に飛び込んできた。

『野蛮な読書』

思わず手に取る。装丁もいい。白い地に、イチゴジャムのような濃い赤色が表紙の上半分を占め、その中に黒い線で女性が描かれている。黒い線の中は白抜きされているので、赤い背景の中にすっと輪郭が浮かび上がる。その絵の下、表紙の中央よりやや下がったところに絵の中の赤に近い色合いで『野蛮な読書』とタイトルが横書きされている。

集英社から2011年に出された本だ。雑誌「すばる」に連載されていたものらしい。恥ずかしい話だが、平松洋子さんという著者の名前をこれまで全く知らなかった。しかし、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。それだけ魅力を持った文章である。

この『野蛮な読書』は、タイトルが示すように書評集である。いや、書評を含んだ随想集と言った方がいいか。ごく一般的な書評集より一冊一冊の本と著者との距離がぐっと近い。その分だけ本との親密な気配が濃厚に漂ってくる。

一冊の本から連想されるように、次から次へと別の本が浮かび、紹介されていく。その関連の仕方は、著者の内的必然によっているので、ある意味でとても個人的な読書体験に裏打ちされていることになる。ところが、その本のつながり方の個人性が、逆に、親しい人から本を紹介されているような温かみを感じさせる。

文章の切れ味といい、その視線が及んでいく深さといい、実に気持ちのよい書評集である。今回新たに、平松洋子さんという頼りになる書評家に出会えたことは、偶然のこととは言いながら大きな収穫だ。

それにしても、この本の著者である平松洋子さんにしろ、辛口書評の斎藤美奈子姐さんや故人となった米原万里さんにしろ、女性の書く書評はなぜこうも面白いのだろう。清少納言の昔から、「をかしきもの」を並べ立てるのは女性の方がすぐれているのかもしれない。美意識や感覚の繊細さが違うのだろう、たぶん。

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