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2013年5月22日 (水)

五月の読書・続き

ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を読んで衝撃的だったのは、経済的ショック療法と抵抗勢力への肉体的ショック療法(拷問や殺害など)が、実はセットになって事態が進行しているという指摘。チリやアルゼンチンのクーデターでは、軍事政権が急激な経済政策をとる一方で、反対勢力を弾圧し徹底的に誘拐や拷問や殺害という手法がとられた。

拷問の中で使用されるものの一つが、電気ショックである。もともと精神疾患の治療に用いられた電気ショック療法の研究にCIAの資金援助がなされていたということも驚きだったが、このショック療法を精力的に研究していた人物の基本理念はさらに驚愕だった。電気ショックにより、「白紙」の状態の精神をつくり出し、そこに「正常な」書き込みをしていくことが有効な治療となるという考え方だ。

シカゴ学派による経済的ショック療法も、基本的には同じような方法論が基盤にある。その国の経済構造を「白紙」に戻し、そこに市場原理主義に基づいた「正しい」経済構造を築きあげることを第一としている。しかし、精神疾患の電気ショック療法への懐疑が出てきたように、経済的ショック療法もその効果が疑わしいのではないかと考えられている。むしろ混乱と格差拡大を社会にもたらしただけではないか。開発よりも破壊へと進んだだけではないか、と。

もっと早く読めばよかったと大いに衝撃を受けた本であった。

さて、孫崎享氏の『戦後史の正体』(創元社、2012年)も、同じように早く読めばよかったと感じた一冊だった。孫崎氏は外務省の元国際情報局長だった人で、第一線で日本の諜報部門を担当していた。高校生でも分かるように戦後の日米関係をまとめてほしいという依頼を受けてできあがったのが、同書。

なぜ日本はアメリカの属領であるのか、その歴史的経緯がこの本で明快に論じられている。対米追随と対米自主の間で揺れながら過ぎてきた日本の現代政治史を、具体的な政治家の思想と行動に触れながら解説していくその一つ一つが、まさに「目からウロコ」の連続だった。

これは、高校生はもちろんだが、多くの方にお勧めしたい一冊である。これを読む前に、同じ著者による『情報と外交』(PHP研究所、2009年)も読んだが、こちらは実体験に基づいた国際情報戦の実際が興味深かった。

小林頼子氏と朽木ゆり子氏による『謎解きフェルメール』(新潮社、2003年)は、フェルメールの初期から晩年にいたるまでの画風の変遷を追い、何がその魅力を生み出しているのかに迫った本である。それほど厚くないが、フェルメールの作品とオランダのデルフト周辺の写真がふんだんに盛り込まれている。

それにしてもフェルメールの絵は、いい。何時間でも眺めていたくなるような魅力を秘めている。窓から入る光線によって照らされた室内の描写もそうだが、人物の身につけている衣装の布の質感がたまらない。布だけではない。陶器や水盤や壺からそそがれる牛乳などの持つ質感には、目が釘付けになる。数少ない風景画でも、建物の壁や通りの石畳などが見る者の視線を奪って離さない。

フェルメールの絵は、幾度も盗難の被害にあっている。真作だと確認されている作品が三十数点と少なく、その希少性から狙われやすいのだそうだ。ある作品の盗難では、キャンバスの端を切り取って丸めた状態で持ち去られたため、絵の具の一部が剥がれ落ちてしまった。最終的には修復されるのだが、受難としか言いようがない。

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