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2013年2月 4日 (月)

江戸的スローライフのすすめ・その39

前回に続き、囲碁が中心となる噺をとりあげてみたい。

まず「笠碁」。この噺に出てくるのはお店の主人二人で、普段から仲がよく碁の腕前もチョボチョボのへぼ同士。いわゆる「碁敵」という間柄。

あるとき一方の主人が「どうです、待ったなしで打ってみませんか」と持ちかけると、相手の方も「望むところだ。待ったなしで打ったって負けるものじゃぁない。やりましょう」と受ける。それからいつものように碁が始まるのだが、これまたいつもの癖で「ちょっと待ってくださいよ、これはやっぱりこっちのほうじゃなきゃ…」と待ったが始まる。

「あなた、それじゃぁ、いつもと変わらないじゃないですか。待ったなしにしたんだから、待てませんよ」と相手が不満を口にする。「じゃぁ、言わせてもらいますがねぇ、お前さんが三年前の暮れの二十八日にどうしてもお金が必要だから貸してもらえないかと借りたことがあったね」「なんだい藪から棒に」「その後お前さんのとこも商売の都合があるだろうから、ときどき返すのが遅れて待ってくれないかと頼みこんできたときに、あたしが待たなかったことがありますか」このささいな行き違いがもとで喧嘩になり、誰がこんな家に来るもんか、と相手は捨てぜりふを吐いて帰ってしまう。

さて、それからしばらくはあんな奴の顔も見たくないと言っていたのが、だんだん手持ちぶさたになり、雨が降る日に「こんな日には碁でも打ってると気が紛れるんだが…、来ないだろうなぁ」と主人がつぶやく。一方、相手の方も様子が気になってしょうがない。煙草入れを忘れたから取りに行ってくると口実を作り、富士山に登ったときの笠を頭にかぶってこっそりとやってくる。

来ないかと待ち受けていた主人の方は、物陰から様子をうかがっている相手に気が付き、店先に碁盤を持ち出す。なかなか入ってこられず店先を行ったり来たりしている相手に、じれったくなった主人がとうとう声をかける。「おぅ、あんまり店先をウロウロしてもらいたくないね」「煙草入れを…忘れたもんだからね…、こんなへぼの家に置いといたんじゃ煙草入れがへぼになると思って取りに来た」「煙草入れがへぼになる、だとぉ。へぼかどうか一つ勝負しようじゃないか」というわけで、お互い強情を張っていたのが一気にうち解けて元の通り仲良く碁を打ち始めるという噺。

十代目金原亭馬生さんの噺がしみじみとしていて実にいいと思う。父親の五代目古今亭志ん生師匠には、碁を将棋に変えた「雨の将棋」という噺があり、これもおもしろい。囲碁・将棋というのは同じくらいの腕前の相手が一番たのしいんだろうなぁ。そんなふうに思ってしまう噺である。

もう一つは「碁泥」。これも大店の主同士。好きな碁を打ち始めると夢中になって他のことが目に入らなくなる。碁を打ちながらどちらも煙管で一服するのだが、畳に火玉が飛んで穴焦げになっても気がつかない。奥さんから座敷で碁は厳禁です、と言い渡され、さてどうしたものかと二人で相談を始める。

いいことを思いつきました。こういうのはどうでしょう。庭の池があるでしょ。その中に入って二人で碁盤を首から吊して打ちませんか。これならいくら煙管で煙草をやっても穴焦げはできないでしょ。でも、碁石はどこに置くんだい?腰にびくをさげてそこに入れておけばいいでしょう。でも、足が冷たくなるよ。少しくらいガマンしなきゃ、あなた。

結局、囲碁を打つ部屋と煙草を吸う部屋を分けましょうということになった。しかし、いざ碁が始まると、考えながらどうしても煙草が吸いたくなり「おーい、煙草盆を持って来ておくれ」ということになる。奥さんは女中に、灰の中にカラスウリの頭だけちょっと見えるようにして埋めて持っていきなさい、どうせ碁に夢中でわかりゃしないから、と言う。

そうして火の心配もなくなったからと奥さんと女中は奥に引っ込んでしまう。座敷では二人が夢中になって碁を打ち続ける。そこへ泥棒が入り込むのだが、この泥棒、三度の飯より囲碁が好き。めぼしいものを物色してそのまま外に出ればいいものを、奥の方からパチリパチリと碁を打つ音が聞こえてくると、たまらなくなる。

座敷に近づいて碁をのぞき込むが、夢中になっている二人には気がつかない。そのうち脇から見ていた泥棒が口をはさむようになる。店の主が不思議に思って「お前さん、誰だい」と訊ねると「泥棒です」と正直な答え。「そうかい、泥棒さん、よく来たねぇ」という主の科白でサゲとなる。

あまり演じられることのない噺かもしれないが、のんびりとした面白さがある噺だと思う。

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