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2013年1月10日 (木)

江戸的スローライフのすすめ・その36

前回『黄金餅』を取り上げたときに、現代とは異なる葬儀のことについて少し触れた。棺桶が今のような箱形ではなく、早桶と呼ばれる文字通り丸い桶だったという話をした。

もう少し具体的な葬儀の場面はなかっただろうか。すぐに思い出したのは『らくだ』という噺である。死人にカンカンノウ(どういう文字を当てるのか不明)を踊らせるという落語ファンにはおなじみの噺である。この噺は全編これ弔いの噺なので、真っ先に浮かんできたのかもしれない。噺の内容を追いながら、長屋の葬式風景を見てみよう。

「らくだ」というあだ名の暴れ者がある長屋に住んでいた。この「らくだ」の兄貴分で、向こう傷の熊という、これもカタギの人間ではない男が長屋を訪ねてくる。声をかけても返事がないので、「上がるぜ」と言いながら「らくだ」の長屋に入る。見ると「らくだ」がノビている。台所には自分でさばいたらしいフグの残り。ははぁ、さてはフグにあたっておっ死んだな。あれほどフグはあぶねぇからやめとけと言っておいたのに。

と、そこへくず屋の久造という男が「くずぅい、お払い」と声を上げて入ってくる。兄貴分の男は、いいところに来たとばかりにくず屋を呼び止める。思わず返事をしたくず屋は、しまったと思う。「らくだ」の所で以前ひどい目にあわされて懲りていたのである。返事をした以上しょうがないとのぞいてみると「らくだ」が寝ているのが目に入る。

よく寝てますね。ああ、ずっと起きねぇだろうよ。へっ、ということは…。フグにあたって死んじめぇやがったのよ。それはご愁傷さまで。なあ、くず屋、おめぇこの長屋の月番を知ってるか。

そう言って兄貴分の熊という男がくず屋に命じたのは、「らくだ」の通夜をするから月番が長屋の連中から香典を集めてこいというもの。そいつは無理ですよ、とくず屋はことわろうとするが、やさしく言っているうちに行ってきなと男はすごむ。

くず屋が「らくだ」の死んだことを長屋の月番に知らせると、あの厄介者がとうとう死んだかと月番は喜び、ご祝儀代わりに香典を集めてやるよと請け合ってくれる。

やれやれとホッとして「らくだ」の所にもどると、今度は大家の所へ行ってこいと男が命じる。大家さんはお忙しいでしょうから通夜においでいただかなくても結構ですが、いい酒を三升と煮しめを少々届けてもらいたいと伝えてこい。

そりゃあ無理ですよ。ここの大家はケチで有名な人ですから。そうか…、じゃあ、こう言え。それがダメなら死人の行き所に困っているんで、大家さんの所で死人にカンカンノウを踊らせやしょう、とな。

無理です、ムリですと言いながら、くず屋は大家をたずねる。予想通り大家は断る。「らくだ」に家賃を払ってもらったことが一度もないし、催促に行ったらあやうく殺されかけた。何でそんなヤツのために酒や煮しめなぞ用意できるか。じゃあ、カンカンノウですよ。何だ、カンカンノウってぇのは。何?死人にカンカンノウを踊らせるだと。婆さんや、あたしゃこの歳になるまで死人がカンカンノウを踊るのは見たことがない。長生きはするもんだ。おもしろい。見せてもらおうじゃないか。

スゴスゴと戻ったくず屋に、兄貴分の熊は、よし分かった、お前むこうを向けと言う。言われたとおりにすると、兄貴分はくず屋に死んだ「らくだ」を背負わせる。ヒィとなるが、兄貴分におどされてくず屋は大家の所で「らくだ」にカンカンノウを踊らせる。腰を抜かしかけた大家は、分かった分かった、言われた通りにするから「らくだ」を連れ帰ってくれと懇願することになる。

この後、八百屋の所に行って早桶代わりに菜漬の樽をもらってくるのだが、ここでも「カンカンノウ」のおどかしが効く。今、大家さんの所で踊ってきたばかりです。何ぃ、くれてやるから持っていけ。というやり取りが笑える。

例によって長くなるので続きは次回。

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