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2012年11月23日 (金)

『夢酔独言』という本

前回触れた坂口安吾の『青春論』のなかに『夢酔独言』という本が出てくる。勝海舟の父親である勝夢酔が、自分の生涯の愚行を振り返って「おれみたいな馬鹿なことをしちゃあ、いけねえよ」と子孫の戒めに残した文章である。

この内容に興味を覚えて、『青春論』を読み終えるとすぐに『夢酔独言』の文庫本を手に入れて読んでみたことがあった。これが無茶苦茶におもしろかった。なにしろ放蕩無頼の生活のあげく座敷牢に入れられた人である。しかも中に入るとさっそく格子を何本かはずして脱出できるようにしてしまう機転というか、悪知恵の働く人物でもある。

ところが座敷牢に入ってこの夢酔先生考えた。待てよ。座敷牢から出るのはいつでもできる。ひとつ、これを機会に手習いでもやって字を覚えるか。というわけで二年の間、座敷牢に籠もった。だから正式の学問を受けたわけではない。にもかかわらず、べらんめえ口調のうかがえる口語の文体は不思議な魅力にあふれている。

息子の勝海舟の書いたものは全く読んだことがないけれども、この父親、勝夢酔の『夢酔独言』は傑作である。北野武が江戸時代に旗本・御家人の家に生まれていたら、おそらくこんな感じの文章を書いたかもしれない。

あいにく文庫本が手許に見当たらないので引用できないのが残念だが、図書館などで…、いやいやもしかすると「青空文庫」あたりにテキストがあるかもしれない(と思いましたが、見つかりませんでした)。興味のある方は、ぜひ御一読願いたい。

ところで、座敷牢に二年入れられるとしたら何をするだろう。この質問は、無人島に行くとしたら何の本を持っていくか、に似たところがある。英和辞典を一冊持ち込んで、二年間で丸ごと覚えてしまうという手もある。漢字筆順辞典を使って、夢酔先生みたいに手習いをしてみるのもいいかもしれない。実はときどき筆順が怪しくなるので…(汗;)。

そういえば、上方落語の「たち切れ線香」では、若旦那が座敷牢ならぬ蔵に百日の間閉じ込められるのだが、その間に学問を積むという噺になっていた。やはり、そういう環境に置かれると学問にいそしみたくなるものなのかもしれない。

といって、拘置所や刑務所のようなところに入りたいわけではない。坂口安吾の『青春論』とともに、ふと『夢酔独言』の面白さを思い出したので紹介してみたまでのこと。

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