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2012年9月11日 (火)

『羊をめぐる冒険』を読む・5

「鼠」からの最初の手紙は一九七七年十二月二十一日の消印で、十二月二十四日に着くように速達で出されている。その日がクリスマス・イブであると同時に「僕」の誕生日であるからだ。

「僕」の誕生日がクリスマス・イブであることは、「特別な耳」を持つ女の子と最初に食事したときのやり取りに出てくる。誕生日とクリスマス・イブのプレゼントが一緒になってしまうからあまり良い誕生日ではない、と「僕」は口にしている。

しかし実際に手紙が着いたのは十二月二十九日になってからで、「僕」が離婚する半年ほど前のことである。

この「鼠」の手紙には、原稿用紙二百枚ばかりの小説が同封されている。そうだ「鼠」は小説を書こうと思っていたのだった。しかし「僕」は題も見ずに机の引き出しに放り込む。「何故だかはわからないが読んでみたいとは思わなかった。」(「村上春樹全作品2」p106)とあるが、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』で「鼠」の書く小説に触れてあった所からすると、読まなくてもある程度内容が想像できたからなのかもしれない。

残念ながらその後、この机の引き出しに放り込まれた「鼠」の小説についての話は出てこない。したがってどんな内容の小説なのかは分からない。原稿用紙二百枚の小説といえばちょっとした分量だ。長編とは言えないかもしれないが、ある程度の広がりと構成を持つ作品のはずだ。わざわざ同封して送っているくらいだから完成した原稿でもあろう。

第二の手紙は一九七八年五月?日の消印となっており、「僕」が離婚する直前に届いたものだ。この手紙の中で「鼠」は「僕」に二つのことを頼む。一つは「街」に帰ってジェイと「鼠」のガールフレンドにさよならを告げてほしいというもの。もう一つは、同封した一枚の写真をどこでもいいから人目につくところにもちだしてほしいということ。

二つ目の頼みは、これから後の「羊をめぐる冒険」の発端を作ることになるわけだが、一つ目の、「街」に帰ってジェイと「鼠」のガールフレンドにさよならを伝えてほしいという頼みを引き受けて「僕」は四年ぶりに「街」に帰ることになる。

それは六月のこととなっている。この月の下旬に「僕」は離婚するのだが、「街」に帰ったときはまだ離婚していない頃なのだろう。

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