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2012年5月18日 (金)

メディアリテラシー

先日の記事に出てきた元経産省官僚、古賀茂明氏のツイッターを見ていたら、上杉隆氏の「U3W.jp」の記事へのリンクが載っていた。「3・11から一週間の上杉隆ツイートと政府・東電発表を照らし合わせる 」というタイトルの記事がそれだ。

3月12日の時点で上杉氏は「メルトダウンが始まった模様」と速報を流している。枝野官房長官(当時)による官房長官会見は、一貫して事故を小さいものに印象づけるような発表しかしていない。海外のメディアも「メルトダウン」という報道を流し始めるのに、官房長官は否定する。どんどん後から事実を追認するような官房長官発表になり、例の「ただちに…」へとつながっていったのだなと今では理解できる。

この上杉隆氏が今年の2月、ルクセンブルクで開かれたフクシマ後の原発対応を議論する欧州会議に招かれた。日本人ではただ一人の参加だったらしい。原発反対派・推進派のどちらからも代表が出席し、割合としてはフランスからの推進派の方が多い会議だったようだ。上杉氏が招かれたのは、事故直後情報を得ようとしたヨーロッパの各国が、日本政府・大手メディアから一向に正確な情報が発信されず、上杉氏が代表となっている「自由報道協会」に所属するフリーの記者の発信が実際に近かったことが評価されたのだそうだ。

しかし、上杉氏は誇らしい気持ちより恥ずかしい気持ちの方が強かったという。チェルノブイリの事故が起きたときは旧ソ連のことでもあり、正確な情報が隠蔽されたのもそれなりに納得できたのだが、日本政府と大手マスコミが協力して情報隠しにやっきになるとは理解できない、と指摘されたからだ。

そして原発推進派のフランス代表から日本の対応を批判されたのが、子どもと妊婦をなぜ早く避難させなかったのかということ。もう一つが、除染はあまり効果がないとチェルノブイリで分かっているのに何故日本では除染に力を入れようとするのかということ。原発推進派が批判しているのは、原発反対・推進の立場は別として、事故が起きたらまず妊婦と子どもを安全なところへ逃がすのは議論の余地がないことだからだという。

このルクセンブルクの欧州会議から一ヶ月ほどして、今年3月11日に行われたDAYS JAPAN主催の講演会(動画はこちら )でも上杉氏は大手メディアと政府による情報隠しの問題に触れている。記者クラブ制度と相まって、「大本営発表」の垂れ流しとでも言うべきありさまだ。東電の会見に取材に行った「自由報道協会」のフリーランス記者たちが、勝俣会長の行動に関連して質問を重ねると、後ろの方に陣取った大手メディアの記者から罵声を浴びせられたという。政府が発表した事故収束の「行程表」についても、当初の行程表からどんどん後退していく変更について、本来なら大手メディアのジャーナリストが追究すべきところなのに、フリーランスのジャーナリストの活動を邪魔するような発言が多かったらしい。

このDAYS JAPANの講演会の中で上杉氏が挙げていたが、東電も含めた電気事業連合会から大手メディアに渡っている広告費が800億円なのだそうだ。2位のパナソニック700億円、3位のトヨタ500億円と比べて大きく違わないようにも感じるが、パナソニックやトヨタはライバル会社があって競争にさらされているけれども、電事連は地域独占企業体だから本来であればこのような巨額の広告費は不要のはず。言葉は悪いけれど、これは大手メディアに対する電事連からの「賄賂」のようなものではないか。都合の悪い事実は報道しないでほしいという無言の圧力がかかるのもうなずける。

記者クラブとクロスオーナーシップ(テレビ局と新聞社を同系列資本が保有すること)の問題点については、ビデオニュース・ドットコムの神保哲生氏も早くから指摘していたが、横並び意識の記者クラブに加えて、最大の広告主が電事連という事実を考慮して大手メディアの報道を見る必要がある。少なくとも、「公正中立」と言い切れないバイアスがかかっていると見た方が適切なようだ。

原発震災後、大手メディアに対する不信感は私個人の中でも大きくなった。大新聞や中央のテレビ局が言っていることだからまちがいないだろう、と言い切れない時代になっている。事実はどこにあるのか、実際はどうなのか、ネットも含めたフリージャーナリズムの報道を参照し、各自が各自で「裏をとる」ような作業が必要なのかもしれない。

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