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2011年9月 4日 (日)

これはブラックジョークなのか

先日、朝日新聞の「ひと」欄を見て驚愕してしまった。福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーになっている山下俊一長崎大教授を取り上げている。何かの冗談なのかと思ったが、朝日新聞がまさか大まじめに山下教授を持ち上げるとは思ってもみなかった。朝日がん大賞を受けるのだという。この方は100ミリシーベルトまでは大丈夫だとか、ただちに健康に影響が出ることはないとか、福島で講演して回っていた人物である。

しかも、一時期文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の委員になっていたのだが、福島の放射線健康リスク管理アドバイザーにいつの間にか転身し、福島県立医科大学の副学長にも就任しているそうだから、おそらく福島では放射線医学の権威として受け入れられているのだろう。長崎大のほうは7月から休職しているという。

だが、この山下俊一教授は、東電の勝俣会長や原子力安全委員会の班目春樹委員長などとともに作家の広瀬隆氏とジャーナリストの明石昇二郎氏から東京地検に、業務上過失致傷罪で告発されている人物でもある(告発後の記者会見動画とその全文文字起こしはこちら )。もちろん検察官による起訴ではないから、これがそのまま刑事裁判に発展するのかどうか私には分からない。こちら のサイトに広瀬隆氏が刑事告発した意図が載っているが、そういう告発の対象となっている人物である。このような方を放射線健康リスク管理アドバイザーとして受け入れている福島県庁って大丈夫なのだろうかと心配になる。

さらに、こちら のサイト記事を読むと、なぜ山下俊一教授が福島県立医科大学の副学長に就任しているのか、その背景が見えてくる。この記事の内容を信用するかどうかは、それぞれの判断に委ねたいが、「疫学的・統計学的データを取る」ということがどういうことなのかその中味を考えていただきたい。WHOがチェルノブイリの子どもの甲状腺への影響を認めるまでにどれくらいの期間が経過したか。ウクライナやベラルーシの医師たちの報告から十数年後になってようやく認められたのであり、それまでに4,000人の子どもの甲状腺ガン患者、15人の子どもの死亡例が出ている。それまで待つことが「疫学的・統計学的データを取る」ということの内実なのだ。

東大アイソトープ研究所所長の児玉龍彦氏が、放射線の影響に関して疫学的・統計学的見地から発言する専門家しかいないのはおかしいと指摘していた。スーパーコンピュータを使って正確な予測が可能になっている時代に、なぜ19世紀のような議論をしなければならないのか。ゲノム解析の成果から遺伝子レベルでの放射線の影響は確定論的に明らかになってきているのに、疫学的・統計学的データ解析を待つ必要があるのか。最先端の知見を結集すれば、驚くほど明快に予測と分析が可能であるはずなのに、真に日本の英知が結集されていない。児玉氏はそのことを駒場で行った緊急提言の中で述べていた。

(児玉龍彦氏の緊急提言に関する当方の記事はこちらのリンクから
     希望の轍・その1
     希望の轍・その2
     希望の轍・その3
     希望の轍・その4
     希望の轍・その5
     希望の轍・おまけ
 同提言の全文文字起こしは、こちら のサイトがおすすめ)

産・官・学・マスコミの一致団結した愚民政策の一環なのだろうか。朝日新聞の購読をやめようかと本気で考えてしまった。

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コメント

僕も放射能関連のあまりのひどい記事に、今まで購読していた地元紙を河北新報に変えました。
ブラック過ぎて冷や汗が出るような新聞のスタンスに、愕然とします。本当に・・・。


【学び舎主人】
金田先生、コメントありがとうございます。

朝日新聞は、現在迷走中なのだそうです。どうも社内の意見が統一されていないようで、ある意味支離滅裂な感じです。この支離滅裂さをもう少し眺めてから、どうしようか考えようと思います。

投稿: かねごん | 2011年9月 4日 (日) 22時17分

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