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2011年4月28日 (木)

晴耕雨読の日々・その3

大震災後、もう以前のような心持ちには戻れないのではないかと思っていた。3.11以前とそれ以降とに截然と区切りの線が引かれていて、それまでの一つの時代が終わってしまったような感触が消えなかった。

すでに震災から一ヶ月半以上経つ。震災直後の日々が遠い夢の中の出来事のように思われる。沿岸部の被災地ではいまだに瓦礫の山が残り、行方不明者もまだ1万人以上だというのに、内陸部はすっかり震災以前の「日常」に戻ったような雰囲気だ。それはそれでいいことなのかもしれない。被害の少なかった内陸部は少しでも経済を回して沿岸部に支援できるようにしなければいけないのだから、いたずらに自粛ムードに入るのではなく以前の「日常」を取り戻すことが必要だと思う。

そういう「日常」が戻ってきたときに、ふと手に取ったのが藤井貞和の『古典の読み方』(講談社学術文庫)だった。ずいぶん以前に途中まで読んで投げ出していたのだが、何気なく読み返してみるとこれがやたらに面白い。『竹取物語』や『源氏物語』、あるいは『落窪物語』『伊勢物語』などなど、さまざまな古典を縦横無尽に引用しながら古典の魅力を存分に語っている。なにより文章のリズムがいい。たしか藤井貞和は学者である一方詩人でもあったはず。そのせいか和歌について触れた部分は、詩人としての感性に裏打ちされた鑑賞となっていて、学問的な正確さを求めるあまり古典の持つ「つや」を消し去ってしまったような味気ない鑑賞とはひと味もふた味も異なるものになっている。

この『古典の読み方』を読んでいるうちに、古典がむやみに読みたくなってきた。すっかり忘れてしまったような気がしていたが、やはり私が帰っていくところは古典の世界なのだなとしみじみ思った。学生のころも、塾の中で高校生に古典を教えるようになってからも、古典そのものはそれほど好きではなかった。にもかかわらず、こうして震災後の空っぽになってしまったような気持ちをひたひたと潮が満ちるように埋めてくれるものが古典であったとは。

今年はこの先どうなるのかまったく分からないが、じっくりと古典に向き合っていこうかと思っている。

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コメント

小林先生

こんにちは。
しばらく投稿がないので
何かあったのでは・・・と思って
コメントしました。

勝手ながら10月に岩手に行かせていただきます。
是非、先生ともお会いしたく思っています。


【学び舎主人】
上野先生、ご心配をおかけして申し訳ありません。
いろいろと重なることがあり、少し更新を休んでいました。
10日の記事に書いてありますので、よろしかったらご覧ください。

10月の件、金田先生からも伺っていました。みなさんにお目にかかれることを楽しみにしています。

投稿: 上野義行 | 2011年5月 8日 (日) 17時58分

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