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2011年3月 4日 (金)

花見はまだか

しばらくぶりに六代目三遊亭圓生師匠の噺を聴いてみた。うまいなあ。あらためてそう思う。話芸としての落語は一人芝居のような要素を多分に含んでいる。その芝居の要素を、圓生師匠は堪能させてくれる。

何を聴いたのか。「花見の仇討」という噺である。いかにも落語的展開の噺で、お好きな方も多いのではないかと思う

毎度おなじみのお気楽な連中が、陽気もよくなってきたからそろそろ花見にくり出そうじゃねぇか、という相談をする。だけどよ、ただ花見に行ったんじゃ面白くねぇやな。さ、そこで一つ趣向を凝らそうってぇ寸法だ。何かいい考えでもあんのか?こういうのはどうだ。

というわけで一人が、仇討ちの芝居をうつってのはどうかと切り出す。巡礼姿の兄弟役がいて、その二人が花見の往来で父親の仇にばったりと出くわす。ここで会ったが百年目、いざ尋常に勝負、勝負。と仇討ちを始めるわけだ。ふむふむ、それで。そのまま斬り合いをしたんじゃ、洒落にならねぇわなあ。そこに六部がやってくるんだよ。(六部とは六十六部のことで、全国を巡礼して1国1箇所の霊場に法華経を1部ずつ納める廻国聖のこと。山伏のような格好で、背に法華経の入ったつづらを負っている)

その六部が、お待ちなせえと間に割って入るわけだ。ふむふむ、それで。見物客がハラハラして見てるだろ、その往来の真ん中で背中のつづらをどっこいしょと降ろすんだよ。背中のつづら?そう。中から花見の酒肴が出てきて、なあんだ花見の趣向かあって見物が気がつくって話よ。ほお、面白えじゃねぇか。

お気楽な連中なので、すぐに配役も決まりそれぞれ支度をして花見の場へ出かけることになる。ところが、巡礼姿の兄弟役の二人が、途中で花見酒に酔っぱらったお侍にぶつかってしまう。平謝りに謝るが、酔っぱらったお侍は許さない。無礼者、たたっ切るからそこに直れ。すごい剣幕である。そこへ酔っ払いの同僚がやってきて、止めに入る。まあ、待て待て。この者たちはただの巡礼ではあるまい。先ほどから見ておったが、仕込み杖が鞘ばしっておる。何か子細があるのであろう、わけを聞かせてはもらえぬか。実は、仇討ちの相手を捜して巡礼しておりますと告げると、この同僚の侍は感激して、仇に出会ったらぜひ助太刀をいたすと約束しその場を別れる。

一方、仇役のほうは巡礼兄弟がなかなか現れないので、イライラしながら煙管をプカプカやっている。やっとのことで巡礼兄弟が現れ、遅かったじゃねぇか、早いところ始めようと小声で仇役が伝えると、巡礼兄弟が「やあやあ、ここで会ったが百年目。親の仇、いざ尋常に勝負、勝負」と大声を上げる。何だ何だと物見高い花見客が集まり、たちまち人垣が出来る。

さて、仲裁に入るはずの六部役の男もすっかり支度をして約束の場所へ向かう。その途中で、この男のおじさんにばったり出会う。おじさんは高齢で耳が遠い。「お前、どこに行くんだ、そんな格好で」「おじさん、これは花見の趣向で」そう言っても、おじさんは聞こえない。揚げ句のはてに、お袋を捨てて六部に出るなんぞロクな話じゃねえ、説教してやるからおれの家に来いと引っぱって行かれる。六部の男は仕方なくおじさんの家に行き、つづらの中から花見の酒肴を出して見せる。じゃあ、まず一杯やるかと酒の好きなおじさんは呑み始め、付き合いで六部の男も呑み出すが、この男酒に弱い。すぐに酔っぱらって眠りこけてしまう。

花見の往来で、いざ尋常に勝負と向き合っている巡礼兄弟と仇役は六部の登場を待っているが、いくら待ってもやって来ない。取り巻いている見物から、早くやれとヤジが飛ぶ。そうこうしているうちに、人垣をかき分けて前に出てきたお侍が二人。見ると巡礼兄弟がさっきぶつかった相手とその同僚である。まずいと思ったが遅かった。「やあやあ、親の仇に巡り会えたとはめでたい。われらも助太刀いたすゆえ、存分に仇を討たれるがよい」と助太刀を申し出る。

困ったなあ、どうする。巡礼兄弟と仇役は小声で相談を始める。六部が来ないんじゃ趣向にもなりゃしねぇし、どうしよう。ぐずぐずしている姿にしびれを切らし、助太刀を申し出たお侍が刀を抜くという展開になる。

脳天気な連中が受けをねらって大しくじりをするという噺で、大好きな落語の一つである。岡田准一さんが主演した是枝裕和監督作品『花よりもなほ』でも、この「花見の仇討」の噺がうまく使われていて面白かった。

温かくなったようでいてこの数日はまた寒さが戻ってしまった。北国の春はまだまだ先の話で、花見時分になるのも遠い先のことになる。

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