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2010年10月28日 (木)

眠りと夢・その12

同床異夢という言葉がある。比喩的な意味で使われることが多いが、一緒に眠っていても夢は別々というのは常識的に理解できる。これが「異床同夢」だと、そんなことってあるんだろうかという珍しい話になる。上方落語には、この異床同夢とでも呼ぶべき夢の噺がある。「土橋万歳」という噺である。

遊蕩が過ぎて丁稚の定吉を見張りにつけられた若旦那は、離れで思案する。なんとか丁稚の定吉を言いくるめて遊びに抜け出せないか。鮨の土産やら小遣いやらをエサに定吉をうまく丸め込み、若旦那は遊びに出かける。

ところが、この定吉が番頭に呼び出される。番頭が大旦那の代わりに葬列に出ることになったのだが、荷物持ちに小柄な丁稚の亀吉を連れていったのでは、荷物ばかりが歩いているように見えて具合が悪い。そこで定吉を供にして、若旦那の見張りを亀吉に交替させようということになる。

葬列が無事終わり、番頭は定吉にカマを掛ける。定吉はうかうかと誘導尋問にひっかかり、若旦那はどこそこのお店に上がっているはずと言ってしまう。そうか、じゃあお前先に店に帰って番頭は少し遅れますと伝えておけ。番頭はそのように命じて定吉を店に帰す。

定吉から聞き出した店まで来ると、若旦那の遊び仲間の名前をかたって呼び出そうとするが、逆に座敷に上げられてしまう。番頭だと分かった若旦那は露骨にいやみを言う。しかし番頭も引き下がらない。これでは身代が保てませんと諫めようとする。

若旦那は腹を立て、帰れ帰れと番頭を階段から突き落とす。下まで転がり落ちた番頭は肩をがっくりと落として店から立ち去る。一方、番頭を追い返してさんざん飲み食いした若旦那は、席を変えて遊び直そうじゃないかと、幇間やら芸者やらを引き連れて、ぞろぞろと土橋の近くまでにぎやかにやってくる。

そこへにわかに追い剥ぎが現れる。幇間や芸者はみな逃げ出すが、残った若旦那が金か着物かと訊ねると、追い剥ぎが妙な要求をする。「今後一切茶屋遊びはやめていただきたい」番頭の茶番であった。

これにまた腹を立てた若旦那は、番頭を悪しざまにののしり雪駄で頭を何度も叩く。がまんしかねた番頭は、葬列に加わるために差していた小刀を抜いて若旦那に斬りかかる。

うーんとうなっている若旦那を定吉が揺り起こす。「ここはどこじゃ?土橋は?番頭は?」と寝ぼける若旦那に定吉は「ここは離れの座敷ですがな」と答える。番頭を呼んできてくれと若旦那からたのまれた定吉が帳場に来てみると、番頭もうとうとしながらうーんとうなっている。定吉が声を掛けると「ここはどこじゃ?土橋は?若旦那は?」と言う。番頭が離れに来て若旦那と話してみると二人とも全く同じ夢を見ていたのであった。

夢でよかったという夢オチであるが、全く同じ夢を別々に見るというのが面白い噺である。噺の大筋は三代目桂米朝師匠が演じたもの。興味のある方は、一度お聴きになってみてはいかがか。

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