« 落語の中の犬と猫・その2 | トップページ | 落語の中の犬と猫・その4 »

2010年8月22日 (日)

落語の中の犬と猫・その3

連日猫のネタで記事を書き続けている。ほとんど病気ではないかと思うほどだが、書き出してしまったものは止められない。こうなったら開き直ってとことん書いてしまおう。

前回の「その2」では「金明竹」と「猫の皿」を取り上げたが、犬にくらべて猫が出てきただけで格段に噺が面白いものになっているのは不思議だ。猫には何かストーリー性を刺激するものがあるのだろうか。

さて、猫が主役級の扱いとなる本格的な噺を二つ紹介したい。東西の代表的な噺家による傑作である。

まず六代目三遊亭圓生師匠の演じた「猫定(ねこさだ)」という噺。ある博打うちの男がひょんなことから黒猫の命を救う。この黒猫がとんでもない能力を持っている。丁半博打の丁半をピタリと当てるという蛸の何とか君にも負けないような猫である。鳴き声で丁か半かを教えてくれるので、男はどこへ行っても大勝ちする。すっかり羽振りもよくなり、兄ィ兄ィと人から一目置かれ、誰言うとなく「猫の定さん」「猫定さん」と呼ばれるまでになる。

ところが、この猫定の女房に若い男ができる。亭主がじゃまになった女房と若い男は殺害を計画する。ある晩、猫定はいつものように賭場に行くのだが、その晩に限って黒猫が一声も鳴かない。変だなと思いながら博打を早めに切り上げて家に戻る。その途中、待ち伏せしていた若い男に猫定は殺されてしまう。黒猫はどこへ逃げたか行方知らずとなる。

一方猫定の女房は、首尾よく亭主が殺されたという知らせを待っていた。土砂降りの雨の音が外から聞こえる。ふいに台所の戸が開いたので様子を見に行った途端、真っ黒な猫が女房の喉笛に噛みついて食いやぶる。

猫定さんが誰かに殺されたらしい、と知らせにきた近所の人が、死んでいる女房を発見し腰を抜かさんばかりに驚く。その晩の通夜には二つの棺桶が前に並ぶこととなった。夜が更けて通夜に集まった一人が目を覚まし、ふと桶の方を見ると、女房の棺のふたが開いて恐ろしい形相の女房がすっくと仁王立ちしている。そのうち首が揺れ腕が動き出す。あまりの恐ろしさに腰を抜かした近所の者は、這いつくばって何とか逃げ出す。

物音に気付いた人間が次々に腰を抜かし、目の不自由な按摩が一人だけ残っている所へ、遅くなり申したと手習いの師匠をしているお侍がやってくる。棺に仁王立ちの女の姿を見て、「ふーむ、仏に魔がさすといって、田舎ではこのようなことが起きると耳にしたことがあるが」とつぶやくと、二つの棺に近づく。

よく見ていると、長屋の隣室との仕切り板に貼られた障子紙が風の加減でひらひらする。隣は空きだなで誰もいないはずである。紙がひらひらする度に仁王立ちしている仏が首や腕を動かす。さてはと手習いの師匠は小太刀を抜き放ち、障子紙に狙いを定めブスリと一突きする。

ギャーッとものすごい一声がして、あとは静かになる。近所の連中が真っ暗な隣の空きだなを調べに行くと、黒猫が刺されて息絶えていたという噺。

猫の恩返しではあるが、結構こわい怪談噺である。趣向はだいぶ違うが「猫怪談」という噺もあり、この噺でも猫が悪さをして仏に魔がさし、早桶からすっくと立ち上がるという似たような展開がある。これも圓生師匠の演じたものを聴いたが、機会があれば別のときに。今回もかなり分量をオーバーしてしまったので、もう一つの噺は次回。

にほんブログ村 教育ブログ 塾・予備校教育へ 教育ブログ 塾・予備校教育

人気ブログランキングへ 人気ブログランキング(教育・学校)

|

« 落語の中の犬と猫・その2 | トップページ | 落語の中の犬と猫・その4 »

落語」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 落語の中の犬と猫・その3:

« 落語の中の犬と猫・その2 | トップページ | 落語の中の犬と猫・その4 »