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2010年7月26日 (月)

夏の一冊

夏休みといえば読書感想文の宿題。何を読んで感想文を書けばいいのか迷っている小・中・高生も多いのではないかと思う。といって、だからこれを読めば感想文が書きやすいですよという話ではない。

つい先日も、中3の息子が「読書感想文の宿題が出るんだけど、なんか短いやつない?」と訊いてきたので、短いのならフランツ・カフカの『変身』だなと話したが、虫嫌いの息子はとんでもない小説だと言わんばかりに却下した。自分で思いつくものはないのかと問い返すと、去年読書感想文を書こうと思って買った芥川龍之介の短編集があると言う。収録されている作品の題を読み上げてもらうと、「羅生門」「鼻」「芋粥」などなど感想文向きの話がある。なんだかんだと話しているうちに、「羅生門」にするかという結論に落ち着いた。

個人的には「鼻」とか「芋粥」のほうが面白いネタを見つけられると思うのだが、息子は「羅生門」がいいらしい。ことほどさように、自分が面白いと思う本や小説と、他の誰かが面白いと思う本は別である。だから月並みな結論になるが、実際に本屋さんに行ってずらりと並んでいる「夏の読書」フェアの中から自分向きの一冊を選んだ方がいいのではないかと思う。

かく言う自分は、夏休み中に何を読んでいただろう。小学生のころはほとんど思い出せない。中学3年の頃の夏休みはよく覚えている。ちょうど今の息子と同じ年頃、夏休み一杯読んでいたのは遠藤周作の『沈黙』だった。読書感想文もこの本で書いた。遠藤周作を読み始めたのは中2くらいからで、「狐狸庵先生」シリーズの軽いエッセイも好きだったが、カトリック作家として書いた純文学のいくつかもよく読んでいた。

隠れキリシタンの農民たちに接触するため潜入するポルトガル人のバテレンたち。役人に見つかり牢に入れられ、棄教を迫られ「転んで」しまうロドリゴ、イスカリオテのユダに相当するような農民のキチジロー。遠藤周作の代表作として有名なこの小説は、中学生には難しい部分も多かったのだが、ぐいぐいと引き込む力がこもっていた。開け放した窓から入り込む風や鳴き続ける蝉の声やゆで上がったばかりのトウモロコシなどとともに、いくつかのシーンが思い浮かんでくる。

高校1年の時は、渡辺淳一の『無影燈』。「白い影」というタイトルで田宮二郎が主演したテレビドラマをご記憶の方もあるかもしれないが、このドラマの原作に当たるのが『無影燈』だった。テレビドラマは原作に忠実に描かれていたと記憶している。それでも小説のほうが数倍面白かった。

『沈黙』にしても『無影燈』にしても、読書感想文のために読んだのではなく、読みたいから読んだ本が面白かったのでそのまま感想文が書けたのだと思う。夏の読書感想文は苦手だなあという人は、感想文を書くためと考えないで、まずは自分が面白いと思える本を見つけようというつもりで、本との出会いを求めた方がいいのではないだろうか。

TBSラジオの番組で「文化系トークラジオ「Life」」という番組がある。ちょうど「夏の一冊」というタイトルで7月25日の深夜に放送したようだ。Ustreamでスタジオの模様が見られるので、何か面白い本がないか探している方は一度ごらんになってはいかがだろうか。(こちら )ストリーミング配信の時間はかなり長いが、いろいろな本が紹介されていて興味深い。

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