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2010年5月 3日 (月)

『壬生義士伝(上)』浅田次郎(文春文庫)

映画の『壬生義士伝』を見たのはいつ頃だったろう。中井貴一が主人公の吉村貫一郎を演じ、その吉村の姿を回想する斎藤一の役を佐藤浩市が演じていた。実は、岩手に住んでいながら、この映画を見るまで新撰組に南部藩を脱藩した吉村貫一郎という人物がいたことを全く知らなかった。

映画で中井貴一が演じた吉村貫一郎の姿があまりにも印象的で、原作を読もうと思いながらそのままになっていたが、やっと読み始めあっという間に上巻を読み終えた。映画では時間の制約があるため簡略化された部分がじっくりと描かれており、何度も泣かされてしまった。小説は大正時代のある新聞記者が、吉村貫一郎の生涯を追って新撰組の隊士だった人間から話を聞く部分に始まる。さまざまな人物の証言や手紙が続き、それによって吉村貫一郎という一人の人間の姿が多層的に描かれていく。その証言の合間合間に、鳥羽伏見の戦いで負傷し大阪の南部藩蔵屋敷にたどり着いた吉村貫一郎の独白が差し込まれる。

浅田次郎という人は科白回しがじつに上手い。読者は聞き手である新聞記者と同じ目線で旧新撰組隊士の話を聞き、大阪の南部藩蔵屋敷で独白を続ける吉村貫一郎のすぐ傍らで聞き耳を立てているような錯覚を味わう。そしてそのさまざまな証言から浮かび上がる吉村貫一郎という一人の人間の生きた姿に、熱い共感を抱かずにはいられなくなる。

南部人は口数は多くないが、愚直なほど頑固である。即断即決はできないが、熟慮の後いったん決めたことはてこでも動かない。この頑固さは、おそらく「荒蝦夷」と呼ばれた阿弖流為(アテルイ)や安倍貞任・宗任らの頃から変わらないものなのかもしれない。「パトリオット」という語は元々は「愛郷者」という意味なのだそうだが、そういう意味で言えば、私もまた岩手を愛する「パトリオット」なのだとつくづく思う。

下巻を読み始めるとおそらく一気に読んでしまいそうだ。読み切ってしまうのが惜しい一冊である。

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コメント

こんにちは。壬生義士伝、僕も大好きです。映画だけではなく、テレビ版もありますよ。4夜連続で1夜2時間だったかな?描写が非常に細かいです。渡辺謙さんの主演で、竹中直人さんが齊藤一、南部藩主の大野さんを内藤剛志さんという映画にまったく引けをとらないキャスティングです。個人的にはテレビ版のほうが好きだったりします。まぁ映画は時間の制約があるので致し方ないのですが。。レンタルもされてますので機会があったら見てみてください。


【学び舎主人】
コメントありがとうございます。
渡辺謙さんが主演したテレビ版の「壬生義士伝」は、Youtubeでアップされていた分を見ました。36回くらいに分割されていたので、ほぼ全編に近いのではないかと思いますが、なかなか面白かったです。

ただ、原作に描かれた吉村貫一郎のイメージは映画の中井貴一の方が近いような気がしました。個人的な感想ですが。

投稿: なか先生 | 2010年5月 7日 (金) 17時48分

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