« トイレ掃除のこと | トップページ | 今日の「オチビサン」 »

2010年5月15日 (土)

上方落語の楽しみ

つい数日前から通勤、帰宅時の車の中は「桂米朝独演会」状態である。上方落語というと、この米朝師匠とその弟子で、もう亡くなった桂枝雀さんの噺しか聞いたことがない。

上方落語は、京・大阪が舞台となる噺が多いので、商人の噺が中心である。御家人・旗本など武家の多い江戸とは大きな違いがある。職人の噺も少ないように思う。

高校生の頃に初めて聞いた上方落語は、桂米朝師匠の「壺算」という噺だった。これは悪く言えば詐欺の噺であるが、計算のロジックにだまされる点が面白い。こういう噺である。

表長屋に引っ越してきたある男がカミさんに「水壺」を買ってきてくれと頼まれる。ぼうっとした亭主では安い品物を高く売りつけられるかもしれないから、とカミさんは買い物上手の評判がある亭主の友人に一緒に行ってもらえと勧める。

友人の所へ話を持っていくと、よっしゃまかしとき、とばかりに張り切って瀬戸物屋へ連れ立っていく。大阪は「水の都」という割にはいい飲み水が得にくく、水屋から水を買い入れてためておく入れ物が「水壺」。大きさによって「一荷入り」と「二荷入り」があったようだ。

瀬戸物屋へ入ると買い物上手で評判の友人は、さっそく番頭と交渉を始める。この「一荷入り」の水壺、なんぼだんねん?はあ、三円五十銭でおます。その五十銭ちゅうのがハンパやなあ、三円にまけとき。それがまかりまへんのや。そないに言わんと、見てみい。とその友人は天秤棒を示す。運んでもらう手間を省いて自分たちで担いで帰るからと交渉を続ける。

番頭は渋っていたが、押し切られて三円にまける。荷造りができて天秤棒を担いでさあ店を出よか、という時になって初めて気がついた亭主が「あ、こらあかん。嬶(かか)、二荷入りの水壺と言うとった」と騒ぎそうになる。「分かっとるから、黙っとき」と友人は亭主を制し、一度外に出てすぐ瀬戸物屋に戻る。

なんぞ、忘れもんでっか?と問い掛ける番頭に、「よう覚えといてくれた。実はな」と二荷入りの水壺の方が欲しかったのをまちがえて一荷入りにしてしまったのだと友人は告げる。「へえへえ、ほな、一荷入りの倍やから三円五十銭…、ああ、三円でお売りしたんでしたな。ほな六円…あんた買い物うまいわ、一円もまけなあかんことになる」とボヤキながらも番頭は二荷入りの水壺を六円で売ることを承諾する。

ここからが面白い。友人は番頭にさっき払った三円があるかと尋ねる。へえ、ここにそのまま三円あります。そう番頭が答えたのを確かめて、「一つ相談があるのやけどな。この一荷入りの壺、なんぼで引き取ってくれる?」「なんぼで引き取るて、今さっき持っていったばかりでっしゃろ。傷さえなかったら元値の三円で引き取らせていただきます」「よう言うてくれた。ほな、三円で引き取ってくれるな?」「へえ」「ほな、三円と三円で都合六円やな?」「…へえ、へえへえ、そないなりますなあ」「ほな二荷入りの壺もろうていくで」

現金で残されている三円と引取料の三円で合計六円だろうと言われて、一度は納得した番頭だが二人が店を出ようとすると、「すんまへん、今のお方、もういっぺん戻っていただけまへんやろか」と引き留める。何が変なのか気がついていないのだが、何となくおかしい所があるということだけは分かっている。そこで確認しようとするのだが、結局買い物上手の男の剣幕に押し切られてしまい、ますますうろたえて訳が分からなくなっていくという噺である。

勘違いをさせてそのまま押し切ろうとする男の話術は、実に巧みである。江戸の落語にはこの手の噺はあまり記憶がない。やはり商都大阪ならではの噺なのかもしれない。

にほんブログ村 教育ブログ 塾・予備校教育へ 教育ブログ 塾・予備校教育

人気ブログランキングへ 人気ブログランキング(教育・学校)

|

« トイレ掃除のこと | トップページ | 今日の「オチビサン」 »

落語」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 上方落語の楽しみ:

« トイレ掃除のこと | トップページ | 今日の「オチビサン」 »