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2009年12月23日 (水)

架空対談:藤原経清氏と振り返る「前九年の役」・その15

(「架空対談」の全文はこちら
(前九年の役の概略は「架空対談をお楽しみいただくために」をご覧下さい)

学び舎:前回は厨川柵が陥落して前九年の役が終結するところまで伺いました。今日も経清さんと宗任さんのお二人にお越しいただいております。どうも、よろしくお願いします。
宗任 :あのさあ、厨川柵が陥落したんだからさ、その後の話はどうでもいいんじゃねえの?だれか興味があんの?
経清 :まだ首級が入京する部分は話していないぞ。
宗任 :首級が入京ったって、お前さん覚えてねえだろ。それともなにかい落語の『首提灯』みたいに自分が斬られたことが分からず生きてたのかい?
経清 :馬鹿なことを言うものではない。この身は斬られたとはいえ、魂魄はまだ留まっておったのだ。京に運ばれたときのこともしっかりと覚えている。
宗任 :けっ、執念深い野郎だぜ、まったく。

学び舎:三人の首級が京へ運ばれたのは厨川柵陥落の翌年の旧暦二月十六日ですね。
経清 :そうです。
学び舎:首級を京に運んで行くとき、誰が担いだんですか。
経清 :それぞれの従者だった者たちが担ぎました。
学び舎:一行を率いたのは藤原秀俊あるいは季俊とも言われる人ですね。
宗任 :季俊なら、経清ちゃんの親戚じゃねえか。たしかお前さんの従兄弟にあたる頼俊のせがれだろ?
経清 :その通りだ。
学び舎:じゃあ一族の中で敵味方に分かれていたわけですか。
経清 :やむを得ないことです。私だって乱が勃発した当初は頼義将軍の麾下(きか)に馳せ参じたのですから。
宗任 :因果なもんだよな。でもよ、その後の除目(じもく)であいつ右馬允(うまのじょう)かなんかに出世しやがっただろ?
経清 :そのようだな。
宗任 :なかなか抜け目のねえ奴だな。

学び舎:あのぉ、近江国甲賀郡に来たときに首箱から首級を出して櫛で髪を整えることになったとき、貞任さんの従者だった方が秀俊さんあるいは季俊さんに櫛がないことを告げると「おまえたちの私用の櫛があるであろう。それでくしけずればよいではないか」と言われてますね。
経清 :あの時は正直言って、わが一族の人間ながら何と情けを知らぬ奴だと腹が立ちました。もっとも私は首だけになっていたので何もできませんでしたが。
宗任 :出世することしか頭にねえ野郎なんだろ、たぶん。だから平気でそんなことが言えたんじゃねえのか。
学び舎:その時に貞任さんの従者だった方が、「わが主(あるじ)が生きていらっしゃったときは、そのお姿を高い天のように仰いでおりました。思いもいたしませなんだ、わが垢じみた櫛で、かたじけなくもその御髪をくしけずることになろうとは」と涙を流しながら言ったということですが。
宗任 :グッと泣ける話じゃねえか。兄貴もそこまで慕われて幸せ者だぜ、まったく。
経清 :その者のひと言には見物もみな心を動かされたのか、涙を誘われた者が多かったようです。

学び舎:それで、京に入ってからはどうだったんですか。
経清 :まず、京に入るに先立って粟田山に行き、それから夕方になって洛中を目指し、検非違使(けびいし)の待つ四条京極の間で受け渡しとなりました。それぞれの名前が朱漆で書かれた検非違使の鉾に刺しかえられると、貞任殿、重任殿、私の順に行列をなして四条大路を運ばれました。
宗任 :やたらに見物が多かったっていうじゃねえか。
経清 :それはもう大変でした。牛車の車軸を覆う部分がぶつかり合い、人と人の肩がすれるほどの込みようでした。
学び舎:そのまま四条大路を西の獄門まで進んだわけですね。
経清 :そうなります。そして最後に西の獄門にある楝(おうち)の木にさらされたのです。
宗任 :あまり思い浮かべたくないような眺めだな、そいつは。

学び舎:除目が行われたのは同じ旧暦二月二十五日ですね。
経清 :ええ。頼義将軍は正四位下伊予守となり、長男の義家殿は従五位下出羽守、次男の義綱殿は左衛門尉(さえもんのじょう)。清原武則殿は従五位下鎮守府将軍になりました。
宗任 :武則が鎮守府将軍ってのには驚いたぜ。まさか地元の人間がなるとはなあ。いくら功績があるからたってよ、義家が黙っちゃいねえだろ。
学び舎:義家さんは出羽守になったものの着任したかどうか分からないみたいですね。
宗任 :そりゃ当たり前だろ。出羽守になってやって来てみろ、仙北の清原のとこと陸奥の奥六郡には手も足も出せねえんだぜ。出羽国府の辺りでぶらぶら暇つぶしでもしてるしかすることがなかっただろうからな。
経清 :そうでしょうね。出羽と陸奥の北半分は清原の領分ということになったわけですから。

学び舎:では、いよいよこの架空対談も次回が最終回となります。宗任さんたちが降人となってからどのように過ごされたかお聞きしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
宗任 :任せときな、たっぷり聞かせてやるからよ。
学び舎:あ、いや、あのぉ、最終回ですのでそれほどたっぷりとはいかないと思いますが…。
宗任 :じゃあ、最終回・その2とか最終回・その3とかやりゃあいいじゃねえか。お前さんよく「その2」とか「その3」とかつけるの好きだろ?
学び舎:え!?よくご存じで。
宗任 :冗談だよ。ちゃんとまとめてやるから心配すんなって。
経清 :大丈夫です、私が一緒に来ますので。
学び舎:よろしくお願いします。

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コメント

まいど、です。
ゲストお二人の茶目っ気ある話に思わず吹き出してしまいました。

首級を京まで運んだ件に関しては、いろいろ想像してしまいますが、いずれにせよ、敬意を表しての事もあったんだろうと感じています。

それはそうと、今回出演されてない兄弟たち、そろそろウズウズしているのではないでしょうか?「宗任の奴め・・・」とか?


【学び舎主人】
コメントありがとうございます。
あと1回で「架空対談」も終了ですので、他の兄弟たちの出演はないと思います。貞任さんは別にして、実は他の兄弟はイメージしにくい感じです。則任さんくらいですかねえ、なんとなく姿が浮かぶのは。地元なのに正任さんはイメージが浮かんでこないし、家任さんや重任さんも同様です。
やはり口八丁手八丁のイメージがある宗任さんが一番キャラクター設定しやすい感じがします。

投稿: ちびやまめ | 2009年12月23日 (水) 18時35分

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