架空対談:藤原経清氏と振り返る「前九年の役」・その2
学び舎:ええ、今日も藤原経清さんをお迎えして、「前九年の役」を振り返ってみたいと思います。経清さん、本日もよろしくお願いします。(「架空対談」の全文はこちら)
経清 :こちらこそ。
学び舎:今回は、陸奥守として下ってきた源頼義さんの任期が終わる天喜四年、一〇五六年の話をうかがいます。まず、頼義さんは何をしに奥六郡にやってきたんですか。
経清 :源頼義殿は陸奥守と鎮守府将軍を兼ねていた。鎮守府将軍として胆沢城の鎮守府に来て府務を行うという仕事があったのです。
学び舎:そのころすでに胆沢城の鎮守府は建物が残っていなかったという話もありますが、どうなんですか?
経清 :確か、なかったはず。鎮守府の建物はなくとも、奥六郡内を巡察すればよいだけのことだから十分に府務は行えたのです。
学び舎:安倍頼時さん、あ、もうこの時はとっくに名前が頼時さんに変わってたんですよね。
経清 :源頼義殿が下ってこられた折に、将軍と同じ読みの「頼良」ではおそれ多いと「頼時」に改められた。
学び舎:それで、その安倍頼時さんは鎮守府の業務を果たしに来た頼義さんの一行を歓待して、土産物まで持たせてますが。
経清 :もう任期が終わるし、このまま都へ帰ってくれれば何事もなく平穏に済むわけだから、少しくらいの出費は痛くもなかったのでしょう。
学び舎:それが、国府多賀城へ帰る途中、権守(ごんのかみ)藤原説貞(ときさだ)さんのご子息たちが安倍貞任さんに夜襲されるという事件が起こる。阿久利川(あくとがわ)事件ですね。
経清 :この事件は真相が分からない。説貞殿の息子たち、光貞や元貞たちがでっち上げたという話もあったし、頼義将軍配下がひそかに企てた謀略だという説も流れたが、案外貞任殿が実際に襲ったのかもしれません。六郡の巡回中に供をした貞任殿を光貞や元貞たちがさんざんからかったという話が聞こえてきましたから。
学び舎:ああ、貞任さんが光貞さんたちの妹を嫁に取りたいと申し出てことわられた話ですか。家柄が違うとかって許されなかった…。
経清 :もともと権守の説貞殿は安倍頼時殿のことをよく思っておりませんでしたし、光貞たちもネチネチと以前のことを蒸し返して貞任殿に恥をかかせたのでしょう。
学び舎:この事件のことが将軍頼義さんの耳に入り、貞任さんの召喚となるわけですが、安倍頼時さんは息子の貞任さんをかばう肚をくくり、一族を集めて貞任さんを守るため戦うことを告げています。よく思い切ったものだという気がするのですが。
経清 :それほど簡単には敗れないという自信があったのです。何といっても奥六郡は相当広い範囲ですし、そこから集められる強兵の力はあなどりがたいものでした。戦線が膠着すれば、そのうち源頼義殿の任期が切れる。いつまでも戦が続くわけではない。そう読んでいたところもあったはずです。
学び舎:でも、このとき坂東の兵(つわもの)たちが軍勢を率いて続々と頼義さんの許に集まってきますね。伊具郡の平永衡さんや亘理郡の経清さんたちも将軍の麾下(きか)に馳せなければならなかった。
経清 :これはやむを得ぬ選択でした。坂東の軍勢が陸続と押し掛けてきた状況では、われわれが将軍に反旗をひるがえしてもすぐに鎮圧されてしまったでしょう。ここは将軍の許に参じ国府側についていないと、血祭りに上げられてしまう可能性の方が高かったのです。
学び舎:実際、平永衡さんは将軍の側近に疑いをかけられて斬られていますけど、なぜまた永衡さんはわざわざ目立つような銀の兜なんかかぶってたんですか?
経清 :永衡殿は見かけをたいそう気にされる方で、銀の兜もお気に入りのものでした。ふつうの兜にしておれば、疑いもかけられなかったのだけど。あの兜のせいで敵方に内通し、いざというときに自分が射られないための目印だなどと讒言(ざんげん)されてしまったのです。どのみちわれわれの立場は早晩難しい位置になっていったでしょうが、永衡殿が斬られたことで私も安倍氏の許へ逃れる覚悟ができました。
学び舎:安倍氏の軽騎が将軍たちの出払った多賀城を襲うと流言を広め、混乱に乗じて安倍方へ逃げたんでしたっけ?
経清 :どうだろうかと効果を危ぶんだのだが、思った以上にうまくいった。
学び舎:このあと、数万に膨れ上がったと言われる将軍麾下の大軍が雲散霧消してしまいますが、なぜなんですか?
経清 :どうも兵粮が十分ではなかったようだ。諸国からの兵粮が集まらず、腹を空かせた軍勢が離脱していき、立て直しを図らないわけにはいかなくなったのです。
学び舎:なるほど。では、本日はここまでといたします。また次回をお楽しみに。経清さん、どうもありがとうございました。
経清 :こちらこそ。
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コメント
経清さん、素直に語ってくれているようで何よりです。(笑)
次回は、いよいよな部分に突入となっていきそうですね。質問しにくい事もあるかとは思いますが、せっかくのチャンスですのでズーズーしくお聞きください。
ところで、経清さんは着物姿でしょうか?ファッションも気になるところです。
(学び舎主人)
先日はおじゃまして、すっかり長居してしまいました。
経清さんは当時の貴族の普段着ともいえる「狩衣」姿でおいでになります(笑)。今の感覚だとスポーツジャケットにノーネクタイのシャツ姿というイメージでしょうか。ラフすぎず堅苦しくなりすぎずというところです。
投稿: ちびやまめ | 2009年5月26日 (火) 17時50分