« 部会長を引き受けました | トップページ | 恒例の読書リスト春版 »

2009年4月 9日 (木)

夢十夜

夏目漱石の「夢十夜」をお読みになったことがあるだろうか。

連作短編とでも言えばいいのだろうか。内容はさまざまであるが、タイトルにあるように第一夜から第十夜まで夢の中の情景のような短編がまとめられている。

漱石といえば明治の文豪であり、「坊っちゃん」や「吾輩は猫である」に始まり「こころ」や未完の「明暗」に至る小説の方が有名だと思う。しかし、この「夢十夜」には夢の世界の不条理感や不可思議な感触がそのまま小説に表現されたような奇妙な味わいがある。繊細さと詩のような凝縮された世界を持つ作品群である。

その中に怖さに目が覚める悪夢のような話もある。といってよくあるようなホラーストーリーではない。「第三夜」に描かれた話は、どんな怪談よりぞっとするものだと私には思われる。夢の中で「自分」は六歳になる子どもを背負っている。確かに自分の子であるのだが、いつの間にか眼が潰れて、青坊主になっている。背負われている子どもと「自分」とのやりとりが怖い。具体的にどう怖いのかうまく説明できないのだが、とにかく怖い。ぜひご一読をお薦めする。この第三夜の不気味さにまさる怪談を私は知らない。寝る前に読んだら本当にうなされそうな話だ。

「第一夜」は何かの寓意が込められているのだろうか。それとも夢をモチーフに短編化しただけなのだろうか。おとぎ話のような不思議な感触と美しさがある。「第六夜」の運慶の話は現代文の問題集などにも取り上げられているのを見たことがある。あまり違和感無く読める話かもしれない。もちろん夢の中の出来事が持つ妙な感触は失われてはいないのだが。

漱石が夢を題材としたこういう短編を残したというのが興味深い。夢の不条理感や不可思議感に何か惹かれるものがあったのかもしれない。

夢といえば先日の明け方、亡くなった友人の夢を見た。三年前の暮れに病気で亡くなった中学時代の同級生である。元気だった頃の姿だった。どこなのかよく分からない場所で立ち話をしている。友人はいつものように煙草をプカプカやりながら笑顔で何ごとか話していた。何を話していたのか思い出せない。夢を見ている間は亡くなったことを忘れていた。すっと目が覚め、ぼんやりした頭で「ああ亡くなったんだったなあ」と思い出した。

この友人の病が重くなって、ちびやまめさんたちと盛岡の病院に駆けつけたときの朝に見た夢も忘れられない。場所は友人の家の二階である。友人は書棚の前に立って話をしている。例によって何を話していたのか思い出せない。顔の表情も逆光になってよく分からない。その友人の背にした窓の外に飛行機が墜落してくるのが見える。ものすごい速さで友人の家の周りを旋回しながら墜落し、機体が地中にめり込んでいく。次の瞬間、家がぐらりと揺れて回転し始めた。ハッとして目が覚めた。病気で入院しているのは知っていた。友人の身に何かあったのかもしれないという気がしてならなかった。その日のうちに共通の友人から連絡があり病院に来てほしいという。その時は重篤な状態になったからというわけではなく友人の母親から会いに来てやってほしいという話があってのことだった。病床にあった友人が夢を見て、その夢の中で親しい友人たちが声を掛けても背を向けてしまうんだと言っていたのを聞いて母親が我々に連絡を寄こしたのだった。

先日見た夢の中の友人は、いつもと変わりがない姿に見えた。一体何を伝えたかったのだろう。

にほんブログ村 教育ブログ 塾・予備校教育へ 教育ブログ 塾・予備校教育

人気ブログランキングへ 人気ブログランキング(教育・学校)

|

« 部会長を引き受けました | トップページ | 恒例の読書リスト春版 »

読書」カテゴリの記事

コメント

ん〜やっぱり人間には未知の可能性を感じますね!
見える人には見えるだろうし…。
ん〜不思議だ…。

(学び舎主人)
夢の領域はあまり手をつけない方がいいのかもしれないけれど、興味をそそられる所でもあります。

投稿: 神秘ヤマニイ | 2009年4月 9日 (木) 23時34分

天国の彼、春になったせいか、あちらこちらに出没しているようですね。(笑) 
夢の中で、フトンを干してる彼を見たという人もいましたっけよ。
相変わらず忙しくやっているのでしょうね。
私も負けてられません。(笑)

(学び舎主人)
フトンを干している?マメな話だなあ。でもあり得る話です。
なんだかいつまで経っても「よお、元気?」と顔を見せそうな気がして仕方ありません。

投稿: ちびやまめ | 2009年4月10日 (金) 16時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 夢十夜:

« 部会長を引き受けました | トップページ | 恒例の読書リスト春版 »