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2009年3月 2日 (月)

春の雪

朝目が覚めるとやけに明るい。あ、雪が積もったんだ。昨夜雪が降る気配はなかったのに起きてみると一面の雪。朝日がさすとキラキラまぶしい。昨日から三月。おそらくこの雪も少し気温が上がれば、すぐに融けてしまうだろう。そういう時期になったのだ。

入試、卒業、合格発表と続く時期になると、なにがしかの感傷的な気分に包まれる。仙人のような飄々とした生き方を理想とする私はそういう感傷に流されたくないと一方では思うものの、生徒と自分の来し方行く末を思い、心波立つことも多い。

公立高校の入試まであと一週。不安を抱えながらも、それを押し返して前へ進むために自分を鼓舞している生徒もいる。カゼでマスクをしてきた同級生に「うつすなよな、絶対。マスクして来るくらいなら、休めよ」「だって今塾に来てなかったら、オレ受からないかもしれないから」と切り返しているやりとりを耳にすると、本音を言いながら受け入れている仲間意識が微笑ましい。ホントに休めよと思っていても実際に言えるかどうかは別の話で、言い合える関係だから口にしているという感じが見える。

今年の中3生はにぎやかで元気がよかった。旺盛な好奇心がそのエネルギーの源になっているんだろうと思ったが、なるべくその好奇心を刺激するような接し方をしようと心掛けた一年でもあった。ほとんど受験には役に立たない知識ではあるのだが、小数点以下六十ケタまで円周率を暗記している生徒がいたり、まったく予想もしていなかったことを不意に質問されてこちらも考え込んでしまったりと楽しいやりとりだった。人の持つ心的なエネルギーは何か一つだけに集中すれば最大限に発揮されるかというとそうではなく、あれもこれもと多方面にエネルギーを分散する対象を持つ方がかえって十分な効果を上げると述べていたのは河合隼雄氏だったか。

だから、授業には関係ないし受験にはまったく役に立たない疑問や興味も切り捨てない方が、かえって教科の勉強も含めたさまざまなことへの意欲を引き出せるのではないかという気がする。英語の諺にもあるとおり"All work and no play makes Jack a dull boy."なのではないか。私自身もいろいろと刺激されておもしろい時間を過ごすことができ彼らに感謝している。

推薦合格が決まって二月末で退会した生徒もそうだ。最後の授業の時に雑談になり、おもしろいことを聞かれた。「竹取物語でおじいさんとおばあさんがかぐや姫の世話をするけど、どうして昔話ではおじいさんとおばあさんが育てるパターンが多いんですか?」確かに「桃太郎」でも育てるのはおじいさん、おばあさんであるし大概の昔話はそうであるような気がしてきた。「そういえばそうだなあ。なぜなんだろう?日本の文化の古い層に根があるのかもしれないなあ。あ、こういう話は柳田國男の本に載っていそうだなあ」「柳田國男?」「『遠野物語』って聞いたことがあるだろ。佐々木喜善という人から柳田國男が聞き取ってまとめた代表作なんだけど」「ああ、その本の題は聞いたことがあります。それに載ってるんですか?」「『遠野物語』には載ってないかもしれないけど、柳田國男なら書いているような気がするんだよ」

この生徒は音楽をやっている生徒で進路もそれに沿ったものだったが、古文や古典に興味があり国語の好きな生徒だった。たぶんこれから進んでいく音楽の勉強に直接古文への興味や好奇心は役に立たないだろう。それでもさまざまなものへの好奇心が枯れない限り、音楽へ向かって進んでいく情熱は薄れないだろうと思う。

何を大事に伸ばしてやれたらいいのか。あれこれと考えることの多い年度末でもある。まずは公立の受験を控えている生徒たちが無事目標を達成してくれることを信じたい。

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コメント

小林先生こんにちは。
水沢地区は定員割れの高校が少なく、激戦区ですね。最後の指導の時期ですが、体調に留意され頑張ってください。
一関はここ20年来最低の倍率になり、早々と2月いっぱいで指導が終了する生徒が多く、なんとなく肩透かしを食った感じの今年の入試ではあります。
こんな年もあるのでしょうね。直前ゼミもなし、直前模試の希望者がいないはじめての状況を迎えております。

(学び舎主人)
コメントありがとうございます。
今週に入ってあと数回となった指導回数に「ああ、もう受験だあ」「先生、あと2回しかないよ、大丈夫だろうか?」と口にする生徒もいます。この数年水高や水工の機械科など特定の学校・学科の倍率が高い傾向が続いて、不安だなあと言いながら志望校を変えず挑戦しようという生徒が来ていますので私も叱咤激励の毎日です。

投稿: かねごん | 2009年3月 3日 (火) 10時59分

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