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2009年2月25日 (水)

読書メモ・2月(2009)

時間が無くて本を読みたいと渇望している状態の方が本は読めるのかもしれない。

冬休みが終わって少し時間ができると、かえって本を読む時間が少なくなってしまった。1月後半はほとんど読了しておらず、2月に入っても読みかけのままの本が多い。というわけでごくわずかしか読了したものはないが、以下の通り。

1 「文学増刊 圓朝の世界」岩波書店・2000年
2 「忠臣蔵」秋山駿・新潮社・2008年
3 「三国志(三)」吉川英治・講談社(吉川英治歴史時代文庫)・1989年
4 「日本人が知らない恐るべき真実」安部芳裕・晋遊舎・2008年

1の「圓朝の世界」は没後百年に当たる2000年に岩波書店から「文学増刊」として出されたもの。三遊亭圓朝は近代落語の祖と言われている。数多くの人情噺や怪談噺を残し、「文七元結」「牡丹灯籠」「真景累ヶ淵」「芝浜」「鰍沢」などなど現在でもその作品群は演じられている。その圓朝作品の中に「鹽原(しおばら)多助一代記」というものがあり、江戸時代に実在した商人の史実に取材したものがある。この作品の後編にあたる「鹽原多助後日譚」があらたに発見され、その全編を載せている。「芝浜」や「文七元結」の落語を聞いて圓朝の作品を読みたいと思っていたところだったので興味深く読んだ。現代の読者には教訓臭が強くて受けないだろうなとは思ったが、多助がさまざまな出来事に遭遇しながらあわてることなく処理していく手際にはいろいろ学ぶべき所も多い。

2は偶然、移動図書で目にして借りた一冊。秋山駿の名前は文芸評論家としてつとに耳にしていたが文芸誌で評論を読んだことがあるだけだった。たぶん一番新しい単行本なのだと思う。新潮社の「波」に一年ほど掲載された忠臣蔵を巡る考察を一冊にまとめたもので、元禄と平成の時代の類似性に触れながら、「忠臣蔵」という物語が創られていく過程を論じている。
掲載期間の制約からなのか考察は討ち入りまでの物語化に重点を置き、討ち入りそのものには触れない。が、江戸城松の廊下で浅野内匠頭(たくみのかみ)が吉良上野介(こうずけのすけ)に切りつけた刃傷事件を仕組んだのは五代将軍綱吉と御側用人柳澤吉保であるという考察は秀逸である。仕組んだ理由の一半は綱吉母桂昌院の従一位贈位に対する宮中への返礼であるとする。もう一半の理由は不人気な「生類憐れみの令」からいくらかでも世間の目をそらし、もっと劇的なドラマで世間の心を沸き立たせたいという意図からだろうと論を進める。江戸に赤穂浪士たちが集まることを黙認したのも柳澤吉保だとする。確かに大石内蔵助(くらのすけ)が江戸入りするとき要所にある関所や各藩は何をしていたのかと考えると、御側用人柳澤吉保が手配して江戸まで足留めされることなく入れるようにしていたのではないかという説には説得力がある。もう少しボリュームのある論考を読みたかった。忠臣蔵のテーマで同じ作者の本格的な論考が出ることを期待したい。それにしても忠臣蔵はなぜこうもおもしろいのだろう。

3は前回に続き、八巻ある文庫版の第三冊目。ついに呂布が曹操に斬られてしまった。この場面も忘れているなあ。呂布に就いた陳宮を助命したかった曹操だが、逆に陳宮は早く頸をはねろと催促する。劉備が徐州を追われ袁紹を頼り、関羽は曹操の許に一時預かりの客将となる。そういえばそのような場面があった。このあたりは覚えている。禰衡(ねいこう)という毒舌家のエピソードなどはまったく記憶がない。こういうちょっとしたエピソードも吉川英治はさりげなく入れて曹操の人物造型に深みを与えている。吉川三国志のおもしろさは傍流の話をきちんと配置しているところにあるのかもしれない。

4は著者がブログで公開していた内容を刊行したもの。ちなみにブログはこちら 「日本人が知らない恐るべき真実」。リンク集の2005年8月のところに最初の記事が載っている。急速に悪化している経済情勢の中で著者が紹介する「地域通貨」の発想は、雇用を創出し地域が再生する一つの方策となるかもしれない。日本はすでに財政破綻しているのではないかという現状分析から始まり、グローバリゼーションが破壊していくものを考察し、「お金」の本質が何であるのかを明らかにする。自分がいかに「お金」のことを知らなかったかよく分かった。と同時に深刻化する不況の風の中、どうやって新しい雇用を創出し地域の活力を再生させていくかということを思うとき、著者の提唱する「地域通貨」は現実味のある方策ではないかという気がする。しばらく「地域通貨」を巡る書籍をあさる日々が続きそうだ。特に『モモ』で知られるミヒャエル・エンデが注目していたシルビオ・ゲゼルという経済学者の理論と地域通貨の運用の実際に興味を引かれる。

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