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2008年4月14日 (月)

「今夜も落語で眠りたい」ってタイトルは上手いなあ

ブログを放置したまま三週間ほど過ぎてしまいました。昔なら、三七、二十一日の願掛けが満願になるくらいの日数です。もちろん願掛けをしていたわけではありません。年度の変わり目になると生活のリズムが急にゆっくりしたものになってしまうため、世の中は春の盛りへ向かうのに冬眠したくなってしまうという困った状態で数週間が過ぎてしまいました。ようやく再始動しようかとやる気が出てきましたので、またお付き合いの程よろしくお願いします。

中野翠さんが文春新書から『今夜も落語で眠りたい』という素敵な本を出しています。

落語にハマリ始めてしばらくたったころ、偶然目にして思わず手にとってしまった本です。この本の中で中野さんは、いつまで経っても自分がまるっきり通にもマニアにもならないところが自分でも驚きだと書いていますが、この部分に深く共感してしまいました。私自身落語が大好きですが、通でもマニアでもありません。聞いたことのない噺がまだまだ山のようにありますし、だれか一人の噺家の全てを網羅して聞いたわけでもありませんから、到底マニアとか落語通というレベルではありません。「落語好き」というのがせいぜいです。

中野さんに共感したのは、それだけではなく落語の世界の住人が好きだという点にもあります。

おなじみ長屋住まいの職人の熊さん、八っつぁん。熊五郎・八五郎という名がありながら、ほぼ熊さん、八っつぁんと呼ばれるレギュラーの脇役たち。長屋の大家さん。この大家さんも大概は世話焼きで面倒見がよいです。中には小言の多い大家さんがいたり、「大工調べ」の大家のように因業な大家もいたりするけれど、店子のことを大事にしています。それから商家の大旦那、若旦那、番頭。大旦那は品のいい人が多いですねえ。大事になことには金惜しみをしない大旦那の姿は、「文七元結」にでてくる鼈甲問屋の大旦那や「柳田格之進」の質両替商、萬屋源兵衛さんによく描かれています。「百年目」に出てくる旦那と大番頭の姿もいいです。

幇間(たいこもち)も重要なキャラクターです。「うなぎの幇間」や「つるつる」の一八、「富久」の久蔵。みんなヘラヘラしながらじんわりと悲哀も感じさせます。また鳶の頭や大工の棟梁は威勢がよくて気っ風のいい人物の代表ですし、与太郎は落語の世界に欠かせない愛すべきボケキャラの極致だと言えるでしょう。

そして落語に出てくる女性たちもチャーミングです。芸者や花魁(おいらん)はもちろんですが、長屋住まいのおかみさんたちが実にいいです。「厩火事」で焼き物や古物の好きな亭主を持つ髪結いのおかみさんが、自分のことを本当に大事に思っているか亭主のことを試してみたいと気をもむところなど実にかわいらしいです。「替り目」のおかみさんや「芝浜」のおかみさんになると「かかあ大明神」と噺の中でも呼ばれるように、つくづくおかみさんはエライと神々しく思うくらいです。

こういった落語の世界の住人は、ごくごく普通のありふれた人たちで、それぞれ欲深かったりずるかったり、つまりは私たちと同じような人々なわけです。そういう人々の馬鹿だなという噺を一緒に笑いながら聞いていると、肩の力が抜けて、そんなにねえ四角四面にものを考えなくてもいいんじゃないの、とどこからか聞こえてきそうな気分になります。肩こりをもみほぐすように、精神の凝りをすっきりほぐしてくれるのが落語のいいところではないでしょうか。

中野翠さんは、もう二十年以上も毎晩毎晩就眠儀式として落語を聴いているそうですが、落語は究極のリラクゼーションだと思います。落語に興味はあるのだけれど何から聞いたらいいかわからない方には、この中野さんの『今夜も落語で眠りたい』をお薦めします。落語の世界の魅力を伝えるとともに、良質な落語入門書にもなっていると思うからです。

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