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2008年1月 3日 (木)

北方水滸伝はいい!

北方謙三さんの『水滸伝』を読まれましたか?

全19巻・別巻1の長大な小説は、これから読んでみようかという方には敷居が高く感じられるかもしれません。しかし、断固としてしかし、第1巻を手にとってページを繰り始めたあなたはすぐに引き込まれてしまうはずです。そしてあっという間に19巻にたどり着き、なんだか最後の巻を読んでしまうのがもったいないような気持ちになると思います。

私が北方水滸伝を読み始めたのは単行本の刊行が始まってすぐの頃でした。北上市の移動図書にさっそく注文を出すと、黙っていても新刊が真っ先に回ってくる状態にいつの間にかなっていて、2005年の10月に第19巻が刊行されるまで五年ほどかけて読みました。月刊文芸誌に連載されていることは知っていましたが、そちらは読まず三ヶ月分が単行本化されるのを今か今かと待ちわびる時間のいかに長かったことか。

この北方水滸伝は、熱い思いを抱かずには読み通せない、北方謙三さん渾身の作品だと思います。かつて吉川英治氏の『宮本武蔵』や『太閤記』や『三国志』が、生きる指針を与えてくれる書物として読まれたように、この北方水滸伝も同じような読み継がれ方をしていくと思います。

人は何を守らねばならないか。それをこの小説は痛切に感じさせてくれます。

そしてまた、決まりきった日常に退屈している自分に強烈な喝を入れ、何かをしなければという気持ちにさせてくれる小説でもあります。かつて石川淳氏は「虚構について」という評論の中で、すぐれた芸術作品を次のように定義していました。曰く、「一般に、立派な芸術作品はかならず惰夫を起たしめる底の力をはらんでゐるものだ。もつとも、それでも起ちえないやうな人間のことを、惰夫といふのかも知れぬ。」

「惰夫を起たしめる」、まさにこの言葉にふさわしい作品だと思います。新年を迎え、今年こそは何かを始めようかという方にお勧めします。文庫化されて既に15巻出ているようですから、2008年の早い時期に文庫の方も19巻まで刊行されるでしょう。

『水滸伝』は、小説を読むことの面白さを余すところなく味わわせてくれます。数多く登場する梁山泊の豪傑たちの中には、きっとお気に入りの人物が何人か見つかることと思います。その魅力ある人物たちが織りなす群像劇のすばらしさも存分に味わっていただきたいと思います。おそらく映像化不可能だと思いますので(制作に必要な予算と時間が膨大すぎて)、小説でしか味わえない世界もあるのだと認識されることでしょう。

『水滸伝』全巻を読まれたら、次はその続編ともいうべき『楊令伝』もお読み下さい。こちらは現在第3巻まで刊行されております。おそらく今月中に第4巻が出るのではないかと思います。私も今、第3巻を読んでいる途中です。もうたまらなくいい場面の連続です。九紋龍史進が、自分の従者として選んだ班光という少年から尋ねられて答える場面の一部などはこんなふうです。

「きちんと生きるとは、どういうことでしょうか?」
「自分に、恥じないことだ。人を裏切らない。卑怯なことをしない。うまくおまえに説明できるほど、俺は多くの言葉を持っていないが」(『楊令伝』第3巻248頁)

北方版の『水滸伝』を読んでいらっしゃらない方には、何のこっちゃと思われるかもしれませんが、このような味わい深い科白が『楊令伝』でも随所に見つかります。

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